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一般講演 P3-242

渡り鳥の分布予測とフライウェイ単位での生息地管理

牛山克巳(美唄市),天野達也(農業環境技術研究所),原田修(日本野鳥の会),諸橋仁美・中井惺・泉真沙子(おっ鳥クラブ),小山内恵子・門村徳男(ネイチャー研究会inむかわ),高田雅之(北海道環境科学研究センター)

渡り鳥は、その生活史において、広範囲に渡る複数の生息地を利用する。これら生息地の環境変化が渡り鳥に及ぼす影響を予測するためには、各生息地の渡り鳥の生活史における位置づけや、生息地間のつながりを理解する必要がある。しかし、渡り鳥のこうした特性を考慮した、フライウェイを単位とする保全管理への提言は、地理的スケールの大きさ等の理由から、ほとんどの場合検討されることがなかった。

北海道中央部を南北に広がる石狩低地帯は、国内で越冬するマガン、ヒシクイ、ハクチョウの重要な渡りルートにあたる。これら水鳥は、ウトナイ湖、ネシコシ地区幅広水路(旧長都沼)、宮島沼などを主要なねぐらとし、ねぐら周辺の農耕地を広く採食地として利用する。これら生息地の中には、例えば、ネシコシ地区幅広水路の水面積が千歳川の浚渫にともなって減少するなど、水鳥のフライウェイ利用に影響を及ぼしかねない環境変化が問題となっている場所もあり、その影響を予測する手段が求められている。

本研究では、まず、石狩低地帯におけるマガン、ヒシクイ、ハクチョウの広域的な分布調査を行った。次に、水鳥の周囲の雪解け状況、水田や畑の面積、塒までの距離、道路や家屋との位置関係などをGISから求め、それらを水鳥の分布に対する説明変数として分布予測モデルを構築した。さらに、構築された分布予測モデルをもとに、実験的に地図上の環境要素を操作し、水鳥の分布に及ぼす影響を予測することを試みた。これらから得られた結果をもとに、モデルの妥当性と発展性、フライウェイレベルでの渡り鳥の生息地管理のあり方などを議論する。

日本生態学会