| 要旨トップ | ESJ54 一般講演一覧 | | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨 |
一般講演 P3-245
近年日本の多くの河川では,築堤やダムの建造による河道の固定化と,高水敷への堆砂による河床の複断面化が進行している。そのような河川の多くでは,洪水時の細粒土の堆積により,高水敷の樹林化や植生の異常繁茂が観察される。高知県の物部川や新荘川においても河床の複断面化の進行と裸地の減少が見られる。本研究では,これらの規模の異なる2つの河川において,過去約40年間の河辺植生の変遷を明らかにするとともに,複断面化の進行した河床の立地環境とそこに生育する植物群落との関連性を検討した。
両河川において,1962年から2004年にかけて撮影された年代の異なる4〜7の空中写真を判読して植生図を作成し,GISを用いて解析を行った。現地では,立地の比高,表層堆積物を測定するとともに,植生調査を行った。
物部川では草本群落と木本群落がともに増加し,1996年の河床全域の植被率は1962年の約2.3倍になった。物部川では河道が分流して河床の地形が複雑な上,河口閉塞による洪水時の流速の違いが細粒物質の堆積速度の違いを生み出した結果,比高と堆積物の粒径の異なる多様な立地が形成されており,それに対応した多様な植物群落が成立していた。しかし1990年以降になって,細粒物質が堆積した砂礫堆に侵入した外来種のナンキンハゼが増加し,河床の樹林化の進行が著しい。新荘川においても1960年代以降,河床植生の植被率の増加と裸地の減少が認められた。しかし,新荘川では川幅が狭くて河床内の地形が単純であり,高水敷への細粒物質の堆積によって植物が定着しやすくなった結果,堤防から竹林が拡大し,低水敷からのツルヨシの侵入が促進された。それらが更に細粒物質の堆積を促進することによって河床の植被率が増大し,礫河原が大きく減少した。