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一般講演 P3-247
人間活動の影響による生物多様性の低下の様相は、しばしば景観構造と生物多様性の空間的対応を時間的な変化パターンとして読み替えることで類推されている。これは、過去の生物多様性データが乏しいためであり、景観構造のどのような変化が生物多様性の低下に大きな影響を与えてきたかを実際に時間軸にそって明らかにした研究は少ない。
本研究では、兵庫県宝塚市御殿山・清荒神周辺における1940年代と1970年代のチョウ相を、漫画家・手塚治虫らをはじめとする昆虫愛好家の採集記録をもとに復元し、また現在のチョウ相を把握することで、過去60年間の異なる3つの時期のチョウ相のデータを得た。さらに、同地域における都市化の進展の様相を具体的に把握するため、それぞれの時期の土地利用の空間パターンを地形図と航空写真から復元し、チョウ相の変化との対応関係を分析することを試みた。
1940年代には70種のチョウが生息していたと推定されたが、その後1970年代には62種に、2000年代にはさらに45種に減少した。種数の減少率は40年代から70年代へは11%、70年代から現在へは27%で、70年代以降の減少率の方が有意に高く、種数の低下が近年になり急速に進んでいることがわかった。種数は、日浦(1972)により半人工植生(山村的)依存型、うっぺい森林依存型に分類されたグループで特に減少が著しかった。一方、調査地を含む半径800m圏内について、土地利用タイプ(森林、農耕地、草地、住宅地、道路、開放水域)ごとの面積変化をみると、森林、農耕地、草地等は40年代から現在までに、いずれも半減あるいは半分以下に減少しており、前述の2つのグループに含まれる種の生息環境が大きく失われていることがうかがえた。他地域との比較を通じて、どのようなタイプのチョウの種数が低下しているか、景観構造の変化とどのように対応しているかを検討する。