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一般講演 P3-248
森林の消失や分断化に対する保全策として,国立公園などの制定がすすめられている.新しい保全地域には,住民の居住区が含まれるケースも多い.分断された森林では,隣接する環境の影響,特に農耕地に生息する鳥類の森林内への侵入が懸念される.また,林縁では,捕食率が高いことが多く報告されており,鳥類の繁殖への悪影響が予想される.
本研究の目的は,森林とそれに隣接する人為的環境がどのような鳥類によって利用されているかを,採餌と営巣の面から明らかにすることである.
研究対象地は,国立公園内に,自然林,二次林,耕作地や集落などが混在する,インドネシア,西ジャワ州のグヌン・ハリムン−サラック国立公園とした.調査は,住民による攪乱が少ない国立公園内の茶農園と,それを取り囲む保護林で行った.隣接する環境での鳥の種構成を比較するために,森林内部,林縁,茶農園にそれぞれ約1.5 kmのルートを設置してラインセンサスを行った.センサス調査は2004年と2006年の乾期に計14回行い,ルート付近で確認された巣を2004年6月から約2年間記録した.
センサスで記録された種の合計86種のうち,ルート付近で営巣が確認されたのは,22種であった.採餌行動が確認された種の種構成は,森林と,開けた環境である林縁や茶農園で異なっていた.一方,営巣場所は,数種で複数のルートに分散していた.例えば,主に森林で採餌を行う種であっても,森林以外の林縁でも営巣が確認された.人為的環境の影響は,環境依存性が高い採餌行動において明らかであった.営巣で利用する環境には幅がある種が多く,採餌ほど特定環境への依存が見られなかった.