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一般講演 P3-251
里山ランドスケープは長期に渡る人為影響を受け続けてきた生態系である。里山を構成する木本種はこの影響に応じた空間分布を示す。筆者らは、里山ランドスケープを土地利用履歴と地形的な要因とを分けて把握し、里山における木本種の空間分布が土地利用履歴の違いによって変わることを示した。この研究では、木本種の環境(地形環境と土地利用履歴)に対応した空間分布パターンを構成木本種の種特性から説明することを目指す。
調査地は、長野県埴科郡坂城町の岩井堂山(793m)を中心とした2km四方の地域で、有史以前より人が居住してきた。木本種の空間分布は、200×200mメッシュごとの種の在・不在により把握した。また、1910年以降の6時点分の土地利用を地形図と空中写真から判読し利用履歴をパターン化した。立地環境(標高・傾斜・日射量・集水面積等)はDEMデータより算出した。
対象種の種特性は、繁殖開始サイズ、耐陰性、最大樹高をそれぞれ測定し、根の形態、繁殖形態、萌芽能力の有無は観察のほかに文献情報を用いた。また、人の影響が強い里山においては、有用植物としての利用も重要な種特性であると考え、文献をもとに植物の利用状況(庭木・栽培・食用等)を点数化した。ロジスティック回帰分析の変数選択により、環境(地形環境と過去の土地利用)に対応した種の出現に関連する種特性を検出した。
その結果、昔から居住域であった里タイプの場所での木本種の出現には、庭木・食用のようにかつて有用植物として利用されていた種特性を持つ種が出現していた。一方、昔から林地でありつづけたタイプの場所は栽植・栽培種ではない種が出現した。里山における木本種の出現パターンでは樹木の特性として人による利用の有無が重要である。