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公募シンポジウム講演 S01-1

空間分布の不均一さを決める要因は何か?:上流から下流への細菌群集遷移パターンの河川間比較

*小林由紀(京大生態研セ), KIM Chulgoo(京大生態研セ),由水千景(科学技術振興機構), 高津文人(科学技術振興機構),陀安一郎(京大生態研セ), 永田俊(京大生態研セ)

河川礫上にはバイオフィルムが発達しています。バイオフィルム内の細菌群集は、河川生態系の食物連鎖、物質循環において重要な役割を果たしています。さまざまな河川環境因子が細菌群集構造や多様性、分布に大きく影響を与えることが考えられますが、詳細についてはまだ明らかにされていません。そこで、全長、流域面積等が比較的類似した琵琶湖流入2河川において、上流域から河口に沿って、礫上バイオフィルム細菌群集の組成と各種栄養変数を調べ、その細菌群集構造と多様性変化パターンの解析を行い、比較を試みました。

群集構造の違いについてはクラスター解析の結果、野洲川では、河口から38km付近の中流域を境に、大きく二つのクラスターに分離できたのに対して、安曇川は明瞭な分離がみとめられませんでした。また、細菌群集の多様性の変化については、野洲川では上流から中流にむけて多様性が増大し、中流から下流にむけて多様性が減少するという傾向がみられましたが、安曇川は下流に向かうほど増加していました。さらに、生産性の指標であるクロロフィルa量と細菌群集の多様性との関係を調べた結果、両河川とも有意な相関は見られませんでしたが、人為窒素負荷の指標である窒素安定同位体比と細菌群集の多様性との間には、野洲川では「一山型」の関係が得られ、人為的栄養負荷が大きすぎると、付着性細菌群集の多様性が減少することが示唆されました。

講演では、河川間での細菌群集遷移パターンを比較し、空間分布不均一さを決める要因について議論したいと思います。

日本生態学会