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公募シンポジウム講演 S01-5

新たな餌資源への適応を腸内細菌群集の変化から考える: 移入種ブルーギルをモデルに

*内井喜美子(京大生態研セ), 米倉竜次(岐阜県河川環境研究所), 松井一彰(総合地球環境学研究所), 奥田昇(京大生態研セ), 川端善一郎(総合地球環境学研究所)

宿主動物にとっての腸内細菌群集の重要性は、現在広く認知されています。主要なものとして、宿主の食物消化・吸収過程における働きが挙げられます。特に、宿主自身が分解できない難分解性植物由来物質を宿主の利用可能な物質へと変換する機能は、宿主の植物利用にとって大変重要であることが知られています。近年、琵琶湖のブルーギル群集に食性に関する多型(ベントス食型、プランクトン食型、水草食型)が発見されました。ベントスおよびプランクトン食型については原産地アメリカでも類似した多型が知られていますが、水草食型の報告はこれまでありませんでした。ふつう植物には動物性食物とはかなり異なる分解過程を必要とするため、水草食型が水草を利用するには何らかの形でその分解機能を獲得しなければなりません。そこで私達は、「水草食型が植物分解機能を腸内細菌群集に依存している」という可能性を考えました。

この可能性を検討するため、まず、水草食型の持つ腸内細菌群集相を生理活性および遺伝組成から調べたところ、その腸内細菌群集は生理的に型に特有でしたが、遺伝的にはばらばらでした。つまり予想に反し、水草食型は型特有の腸内細菌群集を持たないことが示唆されました。そこで、水草食型の実際の餌資源利用履歴を安定同位体分析を用いて検証したところ、琵琶湖においてこの型が餌資源を水草にあまり依存していないことが示されました。さらに飼育実験からは、ブルーギルは利用効率は悪いが水草を同化することが示唆されました。

以上の結果をふまえ、本講演では、腸内細菌群集を介した宿主動物の新しい餌資源への順応・適応、について議論したいと思います。

日本生態学会