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公募シンポジウム講演 S04-1

公共事業の期中評価委員会と住民投票条例――細見谷を例に

金井塚 務(広島フィールドミュージアム)

長期にわたる公共事業においては、社会的状況の変化にともなって、その事業の妥当性は変わりうる。 そのため事業を取り扱う官庁では、おおむね5年ごとに「期中評価委員会」を設置して、事業継続の妥当性を審議することとなっている。独立行政法人緑資源機構が進める西中国山地国定公園を縦貫する「緑資源幹線林道(大規模林道)」も例外ではない。

2000年に設置された再評価委員会では、「十分な保全措置を講じた上で、着工」との判断が下されたが、その後、日本生態学会(2003)をはじめ、地元の環境NGOなどから、計画中止の要望が出され、事態は紛糾した。

現地調査に基づく建設反対の声に対し、緑資源機構が設置した環境調査検討委員会も1年半以上に及ぶ審議の中で明確な結論を見いだすことはできなかった。こうした事態を受け、林野庁は2006年、改めて、同計画を「期中評価委員会」での審議対象事業とし、調査不十分との認識の基、「渓畔林部分及び新設部分については、地元の学識経験者等の意見を聴取しつつ引き続き環境調査等を実施して環境保全対策を検討した後、改めて当該部分の取り扱いを緑資源幹線林道事業期中評価委員会において審議する」 との結論を得た。

また、こうした公共事業は必ず、「地元の意思」がそのよりどころとされている。私たちはそうした政治問題とも戦わねばならない。そのため演者が代表となり地元廿日市市における「大規模林道工事の是非を問う住民投票条例制定を求める直接請求」運動を起こした。科学を社会化する必要に迫られたからである。生態学者がこうした立法に関わる政治運動に参加することを疑問視する向きもあるが、これは研究者として、渓畔林保全のために取り得るぎりぎりの選択をしてきた結果でもある。この活動経験をふまえ、「研究者と政治」について話題を提供し、その是非を検討してみたい

日本生態学会