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公募シンポジウム講演 S04-6

上関原発建設用地と入会権――入会権は時効消滅するか

野村 泰弘(島根県大・総合政策)

入会は生態と大きな関係を有しています。人の生活にとって山(里山)はなくてはならない存在でした。必要な分だけ山から採る。不必要に採らない。資源を枯渇させないように、山の恵みを次世代に引き継ぐために、植林、撫育をしていく。人が山に入るからこそ、山は生態の秩序を保って存在することができます。そうして、人と山の共生をつなぐものが入会でした。入会山は地域集団による共同管理の場です。そうしたルールになっていたのが入会慣習です。

そうした機能を有していた入会は、電気・ガスの普及した昭和40年代から始まった人間の生活様式の変化によって大きな変化を遂げました。自給自足的生活から商品経済的生活への転換の中で、人間が山を必要としなくなったので、山に入ることも少なくなり、伸び放題の山も多くなってきました。 

では、人が山に入らなくなったら入会権は消滅するのか。今でも入会権なんかあるのかという声も聞かれますが、入会権は民法上の権利であり、そう簡単には消滅しません。一般には、入会権という権利は、他人の山に入る権利だと認識されている人が多いでしょうが、それは二つのうちの一つ(地役入会権)であって、もうひとつ、自分たちの山を一定のルールで維持管理している場合も入会権(共有入会権)といいます。後者は山林等の共同所有権ですから時効によって消滅することはありません。前者も、誰も山に入って採取しないというだけでは消滅しません。20年以上山には入っていないということだけでは消滅しません。入会を妨害するような事実を放置していたり、入会集団そのものが崩壊してしまったりしなければ消滅しませんし、一人でも山を守ろうとする人がいれば消滅しないのです。

今後、「里山」「コモンズ」として山は再生の道を探っていますが、その大きなルールとして、入会というものは必要だと考えます。残っている入会を強化していくことを心がけるべきと考えます。

日本生態学会