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公募シンポジウム講演 S05-5
インドネシアにおける1961年〜1990年の雨季の地理的分布及び経年変化、特にエルニーニョ南方振動(ENSO)との関連について、インドネシア全域の46地点における半旬平均日降水量データに基づいて明らかにした。降水季節変化は調和解析による年周期と半年周期の振幅・位相に基づき、主に4つの領域に分類される。年周期が卓越し、9月〜2月に降水極大がみられる季節変化が、南半球の地点を中心としてインドネシアの大部分の領域を占める。赤道周辺や北半球の地点においては、カリマンタン中央山地の西側で半年周期が卓越し、降水量最大が9月〜12月にみられる。東部インドネシアにおいては3月〜8月に降水量の極大がみられる異なった季節変化を示し、降水量も相対的に少ない。その他の領域では明瞭な雨季・乾季を持たない。
降水経年変化については、ジャワ島南東部を中心とした多くの地点でエルニーニョ年(ラニーニャ年)に雨季の入りが全体に遅れる(早まる)特徴がみられる。しかし、雨季の降水量と期間の関連は、スラウェシ南部を除く多くの地点で明瞭ではない。すなわち、それらの地点では雨季の入り前後の9月〜11月に掛けての降水量とENSOとの相関が高いが、雨季の中心や明けの時期に相当する12月〜5月頃においてはそれらの相関が低い傾向がある。
これらの降水経年変動は、局地的な地形・熱的条件によって強く影響をうける小規模の降水雲や、それらから構成される大規模雲擾乱の季節内変動とも関連していると考えられる。海洋研究開発機構・地球環境観測研究センターでは、2001年よりスマトラ島を中心とした地上・高層気象観測を実施し、降水雲の大規模日変化の存在や、その季節変化を明らかにしてきている。シンポジウムにおいては、これらの観測結果も含めて紹介する。