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公募シンポジウム講演 S07-1

群体サイズと群体年齢が群体性サンゴの成長や繁殖への資源配分に及ぼす影響

甲斐清香(琉大・理工・海洋環境)

群体性動物では群体の断片化や部分死亡、群体同士の融合が起こるため、群体年齢と群体サイズが一致しない場合が多い。このため群体性動物では、群体サイズによる群体年齢の特定が難しく、成長と繁殖への資源配分を群体サイズと年齢のどちらによって決定しているのかが解明されていない。そこで野外で同所的に生息する群体性サンゴ、シナキクメイシ(以下、シナキクメ)とパリカメノコキクメイシ(以下、パリカメ)の複数の群体から単離ポリプ(1ポリプ)と小群体片(5ポリプ以上8ポリプ以下)を割りとり、成長率と繁殖量を測定することで、群体サイズと年齢が成長と繁殖への資源配分に及ぼす影響を検討した。

その結果、移植した群体片の成長率は、両種において小群体片よりも単離ポリプの方が高いことが明らかになった。またシナキクメでは単離ポリプおよび小群体片全てにおいて、繁殖が行われていないことが明らかになった。一方パリカメでは単離ポリプでも小群体片でも繁殖が行われており、単離ポリプと小群体片の繁殖量に有意な差は見られなかった。

以上のことから、シナキクメは成長と繁殖への資源配分を群体サイズによって決定しており、性的成熟後、部分死亡により群体サイズが成熟サイズより小さくなれば、繁殖への資源配分を0とし、成長への資源配分を増加させることが出来ると考えられる。一方パリカメは繁殖への資源配分を群体年齢によって決定しているため、性的成熟後、群体サイズが小さくなっても繁殖への資源配分を0にすることはないと考えられる。つまり成長と繁殖への資源配分を、シナキクメでは群体サイズによって決定しており、パリカメでは主に群体年齢によって決定していると考えられる。発表では資源配分の決定方法の違いが、同所的に生息している両種の生活史戦略にどのような違いをもたらしているかも議論したい。

日本生態学会