| 要旨トップ | ESJ54 シンポ等一覧 | | 日本生態学会全国大会 ESJ54 講演要旨 |
公募シンポジウム講演 S08-2
地形や地質などの基盤環境は、その上に成立する植生に大きな影響をあたえており、地地表攪乱や風化などの地表変動、また土壌や水分条件などの違いにより種組成や構造が変化する。地形と植生との対応関係については、これまでもフィールド調査を中心に少なからず知見が蓄積されている。それらの検討の際には、それぞれのパラメータの空間スケールや時間軸、階層性の違いなどを考慮する必要があるが、それがことのほか難しい。地学的現象の時空間スケールは植生の遷移や更新のスケール、あるいは人間生活のスケールと比べるとはなはだ長大だからである。特に山地が対象の場合は尚更である。
一方、主に1990年代以降、コンピュータやリモートセンシング技術の向上により、地形計測や分析の技術や地図情報を表現し、重ね合わせなどを行い解析する方法、すなわちGISの手法が発展し、一般化がすすんできた。GISでは異なるスケールや階層の情報を見かけ上同列に扱うことができることから、たとえば1/50000の現存植生図(環境省)やその他の植生図,数値標高モデル(DEM),土地被覆図等を使用して植生と地形との対応、あるいは動物の生息環境を評価・推定することが現実的なものとなってきた。極端な話だが,これらのデジタル主題図を組み合わせるだけで,実際に現場の実態を知らなくても,それらしい解析を行うことは可能である。しかしながら,現在整備されている地形データや植生図などデータの質や量について、それが求めている解析のスケールや精度を担保しているのか、あるいはデータが十分に生かされるようにきちんと加工されているのかについては疑問を持つ場合が多い。
そこで今回は、いくつかの異なる空間スケールを対象に、主にGISベースで地形や植生情報の扱いや解析上の留意点について述べたいと考えている。