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公募シンポジウム講演 S09-1
貯水ダムは,河川が本来もっている輸送機能などの連続性を絶つため,下流の河川環境にさまざまな影響を与え,その結果として,生息する底生動物などの生物相変化・河川の生態機能の変化を引き起こす。海外の大陸性河川においては,ダムが河川環境・生態系に与える影響について研究が進んでいるが,日本においてはダム河川における生態学的研究は未だ断片的である。日本のダムは,規模が小さくこまめな運用を行っているなど,海外と異なる特徴を多く持つため,海外での知見はそのまま日本のダム河川に適用することができないと考えられる。また,これまでの研究では,ダム下流における底生動物群集変化に対し,どの各環境因子が強く影響を及ぼしているのか,その因子間の相対的な比較はほとんどなされていない。さらに,ダム下流において支川が合流すると,ダムによって影響をうけた河床環境が改善され,生物群集も再び変化すると予測されているが,これまでの研究では,支川流入により,どの環境因子が改善され,どの生物が強く影響を受けるのか分かっていない。今日,ダムをめぐる問題においては,下流生態系に及ぼすダムの影響を軽減させることが強く望まれているが,この軽減策を考えるには,どのような環境因子がダムによって強く改変され,支川によって改善されるのか,またそれに対し,水生昆虫など底生動物の反応はどのようなのかを明らかにすることが重要と考えられる。そこで,本講演においては,木曽川水系阿木川ダムでの調査結果を主として,貯水ダム下流における底生動物群集の変化,およびその群集変化に対し強く影響を及ぼす環境因子のうち,支川により改善される環境因子は何であるのかを明らかにし,より効果的な軽減策への応用につなげていきたいと考えている。