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公募シンポジウム講演 S09-3
米国コロラド川のグレン・キャニオンダムで、1990年代から実施されている大規模なフラッシュ放流(ダムからの人工的な洪水規模の放流)は世界的にも注目されている。日本国内においてもダム下流河川の環境改善のために、フラッシュ放流が着目され、2000年以降各地のダムで試行的な放流が試みられている。しかし、その効果のモニタリングや評価については必ずしも十分でなく、下流環境改善手法として定着しているとは言い難い。フラッシュ放流の目的としては、表面と間隙を含む河床環境の改善、砂州(砂礫堆)を含む土砂の再配置、シルトや藻類などの除去、特定の動植物の駆除などがある。その目的に応じて、放流の規模や時期は異なってくる。いずれにしても、放流の効果や影響を決めるものは、全体としての規模(magnitude)、ピーク流量(peak flow)、継続時間(duration)、それに放流の季節的や経時的なタイミング(timing)である。大陸の大規模なダムに比べて、日本国内のダムの貯水量は著しく小さく、人工放流に使える水量は限られている。また、ダムが山地に建設されることが多く、下流河川の堆積土砂の粒径も大きく、放流による土砂移動が小さくなる。また、貯水方式も、洪水を含めて大部分の流量を貯水する巨大ダムとは異なり、中小洪水の貯水が中心になっている。このようなダムの規模と運用の違いや河川環境の差異は、今後の日本におけるフラッシュ放流の方式を考えるときにも、重要な観点である。日本国内のフラッシュ放流の事例を報告するとともに、実スケールに近い大規模実験河川における放流実験(人工洪水)のモニタリング結果(Mochizuki et al., 2006)も紹介しながら、日本型のフラッシュ放流の今後を考究する予定である。