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公募シンポジウム講演 S09-4
題目(変更)生元素循環からみたダム湖の特性解析
ダム湖は人造湖であり、湖沼学的な視点において自然湖沼と色々な点で異なっている。ダム湖の物質循環の特質を明らかにすることは、効果的なダム湖生態系の保全を行うために必要である。
湖沼の物質循環は湖水の物理構造に影響を受け、物理構造は湖や集水域の水文環境によって特徴付けられるため、水文環境はダム湖の物質循環の主要な環境因子であるといえる。ダム湖は流域に降水が多いと多目的に利用されるが、降水量が少なければ農業用水等の利水に力点がおかれる。ダム湖の物質循環を考える上では、このような利水も人為的水文環境として捉えるのが良い。降水量が少ない流域のダム湖では流入水量や貯水量が少なく、人為的な水位操作が物質循環に大きな影響を与えるからである。
四国は北部地域と中南部地域とで降水量が大きく違う。中南部の水源である四国山地では年間降水量が3000mmと多く、大規模なダムが多く存在する。一方、北部では1000mm前後と少ない。ダム湖も数百万トン規模と小さく、農業用水等の利水を主な目的としている。
本発表では、四国北部地域の讃岐山脈(降水量少)と中部地域の四国山地(降水量多)のダム湖で行われた生元素の物質循環に関して報告する。この研究では、各々のダム湖における生元素の分布の違いから、特に降水量の少ないダム湖における物質循環の特徴を抽出している。その中で、中深水層における溶存酸素の減少、湖水中の高い窒素濃度、灌漑用水放出後の湖内の一次生産の増大等が降水量の少ない流域におけるダム湖の物質循環の主な特徴であり、水質汚濁を促進させる要因であるとわかった。また、この研究を通して、自然的、人為的水文環境を主要な要因として物質循環を捉えていくことが、ダム湖生態系の特徴を明らかにし、効果的な保全を行うために必要であると指摘された。