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公募シンポジウム講演 S09-5

流域生態系の健全性に基づく流域保全ー個体群存続解析及び生態系機能解析による統合化ー

大森浩二 愛媛大学沿岸環境科学研究センター 

流域に対するダム湖の影響は流域全体の状況の中で決まってくる。特に、物質負荷に関するGIS解析、河川の連続性および土砂供給量の流域内における評価を行う必要がある。

1)流域GIS解析:他の土地利用(山林・果樹・都市部等)に対するダム湖の影響の相対的評価をGISを用いておこなう。

2)河川連続性:河川次数解析:流域内において、河川次数1から最大河川次数までの経路数と経路カウントしその水系における河川連続性の指数の最大値とする。これに対し、(ダムを経由しない河川次数1または2から最大河川次数までの全経路の全経路長合計)/(河川次数1または2から最大河川次数までの全経路の経路長の全合計)を計算する。この値が、大きい程、河川の連続性が保たれているといえる。また、分断化の度合が高くなると生息場所の減少から個体群存続の為の最小サイズも問題となる。純淡水魚・移動性の少ない水生昆虫では、個体群存続の為の最小サイズが問題となる。河川分断化により(特に上流側の)個体群サイズが小さくなると個体群の絶滅確率は増大する。また、河川分断化による個体群サイズの縮小を考えるとき生息場所の絶対面積を考慮する必要がある。河川分断化がおこっても大きな面積があれば個体群の絶滅確率に影響しない場合もあろう。

結論:流域生態系全体の健全性を考えるときに上記した河川環境に与える物質負荷、河川分断化、礫供給量/流量の平準化のそれぞれを総合的に評価する方法を見いだす必要がある。流域生態系全体の健全性は、河川生態系の健全性により担保されると考えられる。今後、河川生態系の健全性を適切に評価できれば、各ダム湖が流域環境に与える影響を相対的に評価することができよう。

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