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公募シンポジウム講演 S10-4

外来植物上の昆虫群集の特徴とその変遷

安東義乃(京大生態研センター)

外来植物は同じ原産地の昆虫の定着と繁茂を促進すると懸念されている。外来植物上の昆虫群集の中で、外来昆虫には天敵が少なく外来植物を利用する他種が少ないため、種間競争において有利であると考えられてきた。実際に、多くの外来植物上で外来昆虫の存在が報告されており優占種となることも多い。しかし、外来植物上における外来昆虫の種数が時間的に増加するという報告はない。また、在来植物と同程度に外来植物は在来昆虫種に利用されるケースや、外来植物の生物的防除の対象として導入された昆虫が場所によっては意図せぬ結果を生み出すケースが報告されている。これまでの知見では外来植物上の昆虫群集の時間的、空間的変化の実態とそのメカニズムについて理解することは困難である。

北米原産の外来植物セイタカアワダチソウの上では、同じ原産地由来の外来昆虫であるセイタカアワダチソウヒゲナガアブラムシが優占種として存在していた。しかし、2004年以降その個体数は著しく減少し、アワダチソウグンバイが優占種となった。このグンバイは近年、定着が確認された北米原産の外来昆虫である。この優占種の交代にともなって、植物上の昆虫群集は大きく変化した。今回は、生物間相互作用に注目した2000年以降のセイタカアワダチソウの昆虫群集の実態を報告する。特にセイタカアワダチソウ上において、外来昆虫がもたらす間接効果が相互作用網を形成することによって群集構造の決定に大きな役割を果たすことを示す。また、新たな外来昆虫がそれらの生物間相互作用を変化させ外来植物上の昆虫群集の劇的な変化を引き起こしうることを指摘する。外来植物上の昆虫群集は従来考えられていた以上に時間的・空間的に大きく変化しうる系であり、これらの生物間相互作用に注目してそれらを把握することの必要性を議論する。

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