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公募シンポジウム講演 S11-1

高山・亜高山と低地に生息するミジンコ2種間における遺伝子流動

高橋彰子, *松島野枝, 横山 潤, 占部城太郎, 河田雅圭 (東北大・生命科学)

中部地方から北海道の湖沼についてのこれまでの調査(Yagami et al. in prep)により、Daphnia dentiferaD.galeataは同じ湖沼に生息することはほとんどなく、主に高山・亜高山湖沼においてはD. dentiferaが、平地湖沼においてはD.galeataが生息することが示された。本研究では、北海道から中部、四国・九州における湖沼を調査し、D. dentiferaD.galeataの分布、12SrRNAをコードするmtDNA領域、ITS領域のDNA配列、D. dentiferaのマイクロサテライトを用いて、系統関係、遺伝子流動の程度を調べた。D. dentiferaD.galeataは、頭部形態で区別され、形態による識別は12SrRNAをコードするmtDNA領域による系統と一致した。Derek et al.(2005)により、北アメリカではD.dentiferaからD.galeataへの遺伝子浸透が生じていることが ITS領域の結果から示されている。本研究では、いくつかの湖沼において、D.dentiferaからD.galeataへの浸透だけでなく、D.galeataからD.dentiferaへの浸透も確認された。D.dentiferaD.galeataの分布がおおよそ高山・亜高山・高緯度-低地・低緯度に分かれることから、両種は温度あるいは捕食などの環境に対する適応能力が異なると考えられる。今後の環境変化(温度や生息地)に伴う両種の分布の変動には、移動の程度と遺伝子浸透による適応的性質の変化が大きな影響を与えると考えられる。

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