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公募シンポジウム講演 S12-1

趣旨説明:生態系モデルにおける観測データ利用

伊藤昭彦(国立環境研究所&海洋研究開発機構)

地球温暖化をはじめとする環境変動によって、生態系には未曾有の変化が生じると考えられており、また生態系の変化は気候や物質循環に影響を与える可能性がある。環境科学としての生態学、特に地球環境との相互作用を扱う地球生態学には、生態系の構造・機能や変動をより深く理解し、定量的に高い信頼性をもつ予測を行うことが求められている。そこでは生態系の観察と理論に基づくシミュレーションモデルが使用されるが、その開発(構築および検証)と運用には各種観測データが不可欠である。一方、観測研究の立場では、限られたデータから生態系の全体像を再構築し、空間的スケールアップや将来予測までつなげるには、モデル研究との協力が必要となる。地球環境問題に対し、観測研究とモデル研究は各々アプローチを試みてきたが、このような広域的かつ複雑多様な問題に対処するには、今後は学際的および生態学諸分野間のより高度な連携が必要になるはずである。また、大気-生態系間のフラックス測定や人工衛星による地球観測などから、新たな種類のデータが大量に供給されつつあるが、その活用についても先んじて検討しておくべきであろう。本シンポジウムでは、国内の代表的な生態系モデル(MINoSGI、Sim-CYCLE、SEIB-DGVM、BEAMS)の開発関係者に呼びかけ、各モデルを用いた研究例を紹介するともに、使用した観測データとそれに関する問題点、今後のモデル検証・高度化に有効な観測のあり方について意見を集める。総合討論においては、観測研究の立場からデータ利用に関する現状と要望について意見を求め、両者の連携を促す方策について考える。そこでキーワードの1つになると考えられるデータベースの構築についても、地球観測データセンター構想などの背景を交えつつ実践的な議論を行いたい。

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