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公募シンポジウム講演 S13-2
大阪府北部にある「三草山ゼフィルスの森」には落葉性カシ類を主体とした里山林が残され、ミドリシジミ類などの里山性のチョウ類が生息しているが、高木林化やネザサの繁茂などに伴う衰退が懸念されている。そこで、調査地のチョウ類の保全に必要な要因を明らかにするための調査を行った。
調査地では2000年の秋以降、下刈・非下刈区が25m間隔で縞状に配置されたが、管理実施前の1999年および実施後の2001年にトランセクト調査を行い、チョウ類の群集構造を比較した。その結果、52種1750個体のチョウ類が確認され、両年ともササ食者である3種のヒカゲチョウ類が優占した。しかし、これらの種の密度は2001年に低下し、一方で森林性スミレ食者のヒョウモンチョウ類が増加した。種多様度についても2001年に増加するなど、下刈によるチョウ類群集への影響が認められた。
次に、調査地内に31個のコドラートを設定し局所的な環境要因とチョウ類の群集構造との関係を解析した。その結果、ササ食者の密度は林冠が鬱閉し暗いコドラートで高かったが、チョウ類全体の種多様度は明るいコドラートで高かった。また、落葉層を除去したコドラートでは、チョウ類群集への影響はみられなかったが、林床植物の種数の増加が認められた。
さらに、「広義の里山」を構成するさまざまな遷移系列の植生モザイクの影響を評価するために、調査地および隣接する農村地域においてトランセクト調査を行った。寄主植物の出現する遷移段階に基づく指数により解析した結果、里山林では落葉広葉樹林の植生に依存する種の豊富さが特徴的であったが、農村地域の谷津田と里山林の林間草地には高茎草原〜若齢林の遷移段階の植生に依存する種が多いなどの共通性も認められた。
講演ではこれらの結果に基づき、チョウ類の保全のための里山の植生管理について議論する。