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公募シンポジウム講演 S14-1
時間と空間のスケールは,植生景観がいつどのように変化してきたかという歴史的な側面を明らかにする際には考えておかなくてはならない重要な点である。植生景観の復元を行う手法には様々なものがあるが,それぞれの手法ごとに,両スケールに関しての特質があるため,研究(復元)対象に応じた手法と試・資料を選ぶ必要がある。植生景観の形成に影響を及ぼす自然現象は,様々な時間スケールで起こる。例えば,森林の遷移やギャップ更新といった事象は10 年-100年,植物の分布域の拡大・縮小は100年-1000年という時間スケールでとらえることができる。これに対し,植生景観を研究する手法は,衛星画像解析などでは1年未満,堆積物の微化石分析は100-1000年といった時間分解能をもっている。空間スケールは,生物群系(Biome)規模,地域規模,林分規模に大きくわけることができる。もっともよく用いられてきた花粉分析法など微化石を用いた植生復元については,従来から,復元された植生景観がどのような範囲を示しているかが明確でないと指摘されてきたが,Prentice(1985)やSugita(1993,1994)らによって空間スケールを明確にするためのモデルが考案され,堆積盆の大きさによって,反映される空間スケールが決まってくることが示された。空間スケールは研究手法や材料によって,次のように対応する。生物群系規模であれば,湖堆積物(花粉,微小炭化片など)や衛星画像(リモートセンシング技術)など,地域植生規模であれば,小規模湿原・遺跡堆積物(花粉,微小炭化片など),航空写真(写真判読),地図(地図解読),林分レベルであれば,小凹地堆積物・埋没林(花粉,植物遺体など),絵図(絵図解読)などを用いた植生景観の復元が有効である。