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公募シンポジウム講演 S14-4
平安京造営以来,京都盆地周辺の森林は人間活動の影響を強く受けてきた。しかし,1960年代の燃料革命により,生活資源の採取などの人間活動が森林に与える影響は減少し,その結果,植生景観も変化してきている。そこで本研究では,空中写真判読により京都盆地周辺の森林における燃料革命以降の植生景観の変化を明らかにした。研究対象地は,京都市東山の中央部にあたる高台寺山国有林周辺と,京都盆地北部の深泥池・宝ヶ池周辺,そして宇治市東部の丘陵地である。これらの地域で撮影された空中写真は,1946年に米軍が撮影したものが最も古く,他には国土地理院が1961年,1975年,1982年,1987年に撮影したものなどがある。今回は燃料革命以降の植生景観の変化に着目し,1961年,1975年,1987年の空中写真を用いた。さらに,2004年に高台寺山国有林周辺,2005年に深泥池・宝ヶ池周辺,そして2006年に宇治市東部の空中写真の撮影を行い,さらにそれをデジタルオルソ化して位置座標を与えた画像も用いた。まず各地域のオルソ画像を基にGIS上で相観植生図の作成を行った。続いて,1987年,1975年,1961年と,順に時代をさかのぼって判読を行った。これらの空中写真についてはオルソ化を行わずに実体鏡を用いた判読を行い,GIS上で判読結果から相観植生図を作成した。その結果,以前はいずれの地域もアカマツを中心とした植生であったが,現在は,高台寺山国有林周辺ではシイ林へと遷移が進んでおり,深泥池・宝ヶ池周辺では落葉広葉樹林へと変化している林分が多く見られた。また,宇治市東部ではアカマツがまだ残ってはいるものの,マツ落葉樹混交林や落葉広葉樹林へと移行し,シイの増加も認められた。