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フォーラム講演 T02-1

データベースがあればこんなことができる −個別流域研究の一般化の試み−

大手信人(東大農学部)

生態学の研究ではフィールドワークが基礎となることが多く,そうした場合,ターゲットとする現象に関するデータをとるばかりでなく,サイトディスクリプションをしっかりやらなければならないことについて,皆さんに異論はないと思います.また,そうしたフィールドでの事例研究間の比較は,現象のメカニズムやそれを左右する環境条件を明らかにする上での常套的な研究手法といえます.なぜなら,見られた現象が,同種の研究によっていわれている理論に当てはまるのか否かを吟味したり,同じような事例と比較して,そこからどのような一般則が得られるかを考えたりすることで,研究の独自性や一般性を示すことができるからです.このときに必要な情報は,検討したい現象のそのものに関する事ばかりでないのは明らかで,事例研究ごとのサイトディスクリプションが不可欠となります.自然界の生物学的な現象や生態学的な現象が,地理的に決定される気温や降水量,それらの時間的な変動などに影響されていることはいうまでもありません.ときには,地質や地形といった条件にも左右されていることもあります.ですから,同じ現象に関して,そうした環境条件の異なるサイト間の比較をすることによって,その現象にとって最も重要な環境条件の要素を抽出することができます.

データベースは,こうした比較研究には欠くことのできない研究リソースといえます.ターゲットと思っている現象のデータばかりでなく,サイトディスクリプションとしての地理情報,環境要因等が適切に整理され,現象と環境要因の地理的相違の関連を簡単に検討できるようなインターフェースがあれば,効率的に比較研究を進めることができます.この講演では,集水域スケールでの物質循環研究においてデータベースを作成・利用することによってどのような比較研究が可能となるかを,事例を示しながら紹介したいと思います.

日本生態学会