| 要旨トップ | ESJ59 企画集会 一覧 | | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨 ESJ59/EAFES5 Abstract |
企画集会 T16 -- 3月20日 15:00-17:00 H会場
生物の分布が移り変わる時、その足跡は種内の遺伝構造の中に刻み込まれていく。このような生物地理を解き明かす上で欠かせない方法論が、遺伝構造を調べてその歴史的要因を解釈する「分子系統地理学」である。一方、近年の「生態ニッチモデリングと古気候シミュレーション」の発達によって、全く異なる手法で過去からの分布変遷パターンを推定できるようになってきた。後者の方法論は、特に化石記録に乏しい生物種にとって分布変遷に関する貴重な情報を与えてくれる他、分子系統地理学的解析から得られた歴史仮説と比較することでその信頼性を評価できるという利点がある。また、種の生態ニッチや種間でのニッチ分化を検証することによって、適応的な種分化のプロセスにも切り込むことが可能である。さらに、「地理情報システム(GIS)」を用いて生物地理学的な情報を統合的に比較・解析することで、生物群集やバイオームの歴史を検証できるようになってきた。
本集会では、これらの手法を活用した多彩な応用研究を紹介しつつ、総合的に生物の分布変遷の歴史を考える「新しい歴史生物地理学」の方向性について議論したい。
[T16-1] オーストラリア産針葉樹の分布拡大は生態ニッチシフトを伴ったのか
[T16-2] 生態ニッチモデリングと遺伝データから冷水性淡水魚類の集団構造を推定する
[T16-3] 側所的分布の成立過程におけるニッチ分化の役割:捕食性歩行虫の場合
[T16-4] 飛翔能力の退化と分布変遷が甲虫の種分化に与える影響
[T16-5] 日本の温帯林群集における分布変遷の歴史 -GISによる比較分子系統地理と生態ニッチモデリングによる検証-