| 要旨トップ | ESJ63 企画集会 一覧 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


企画集会 T15 -- 3月22日 9:30-11:30 RoomI

精子からみる生態学

企画者: 香月 雅子(筑波大・生命環境系), 小長谷達郎(京大・院・理)

精子は、古くから様々な分野の研究者から重要な材料として扱われてきた。例えば、その運動機能や形成や受精メカニズムに関する研究から、不妊治療や環境問題、少子化に至るまで、精子は大切な研究材料である。これまで蓄積された精子学の知見は、現在の生態学にも活かされている。

有性生殖をおこなう動物では、受精が次世代の生産に不可欠である場合が多い。そのような種では、メスの適応度は産んだ子供の数(卵数)に、オスの適応度は受精できた卵数に依存する。一般に、多くのメスと交尾したオスほど、受精できる卵数も多くなる。ただし、メスが複数のオスと交尾する場合は、卵を巡る精子競争も考慮しなければならない。オスは交尾前も交尾後も競争するのである。一方、メスは交尾相手を選り好みするだけでなく、交尾後に利用する精子を選別したり、受精のタイミングを変えたりすることがある。精子は、雌雄の適応度を左右する重要な存在といえ、各種の生活史や配偶様式の下で、雌雄の繁殖に関わる生理・形態・行動と密接に関連して進化してきただろう。

本集会では、魚類と昆虫を対象とし、「精子」とそれに関連する形質に注目した研究を行っている方々に話題を提供していただき、それぞれの研究の共通性や今後の展望に関して議論する。

[T15-1] アリ科女王の長期間にわたる精子貯蔵メカニズム  後藤彩子(甲南大学理工学部生物学科)

[T15-2] オサムシの精子競争と多型的な集合精子の謎  高見泰興(神戸大・人間発達環境)

[T15-3] 成虫越冬に関連したキタキチョウの繁殖戦略と精子の重要性  *小長谷達郎(京大・院・理)・渡辺 守(筑波大・生命環境)

[T15-4] 精子競争がもたらすクモハゼの特異な受精様式  竹垣毅(長崎大院水環)

[T15-5] 交尾前後の性選択圧に応じたオスの繁殖成功  香月雅子(筑波大・生命環境系)


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