日本生態学会

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第2回(2025年) 日本生態学会自然史研究振興賞受賞者

大舘 智志(北海道大学低温科学研究所)
林 亮太(日本工営株式会社中央研究所 )


選考理由

2年目の公募となる自然史研究振興賞では、計4名からの応募があった。大学研究者2名、民間企業人、博物館学芸員が其々1名であった。応募人数は4名と少数だったが、全員が十分に受賞できるレベルの申請内容であり、選考委員4名の評価をもとに以下の2名を選出した。

大舘智志 氏
トガリネズミ類の基礎生態を中心として、分類学や系統地理学など多岐にわたる領域で、フィールド調査による分布情報、生態記録、標本を集積し、生態学の基盤強化となる重要な自然史研究を積み重ねてきた。これまで限定的であったトガリネズミ類に関する基礎的な知見を、生態学の一般理論の検証や構築ができる学際領域にまで押し上げた貢献が高く評価された。また、地道な記載や国際共同研究を通じた自然史情報や標本の集積、モノグラフの出版、アウトリーチ活動は本賞の主旨に沿ったものである。特に、哺乳類標本として5000点以上を博物館に寄贈して情報公開している点や、”The Wild Mammals of Japan. 2nd Edition”の筆頭著者として出版を主導するなど、日本の哺乳類学へのアクセスを飛躍的に高め、自然史研究の振興に大きく貢献していることから本賞の受賞者としてふさわしいと判断した。

林亮太 氏
大型海棲動物に付着するフジツボ類に着目したユニークな記載研究と生態学研究をはじめ、分類学、形態学、古生物学、分子系統など多角的かつ統合的な研究をすすめ、その活動はこの分野での重要な自然史研究として高く評価された。情報収集の困難さを補完するための江戸時代の古典資料を活用した文理融合のアプローチは、自然史研究の新たな領域を開拓するものである。林氏らは、記載情報の公開や活用を目的とした、オープンアクセスのオンライン雑誌を運営し、自然史研究の情報公開と活性化にも大きく貢献してきた。民間企業に勤務しながら、環境保全や生物多様性に関する普及啓発など様々な形で活動を続けており、自然史研究の振興に大きく貢献していることから本賞の受賞者としてふさわしいと判断した。

自然史研究振興賞選考委員:三橋弘宗、工藤岳、市岡孝朗、塩尻かおり

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