日本生態学会

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第23回(2025年) 生態学琵琶湖賞受賞者

土居 秀幸 (京都大学大学院情報学研究科・教授)

推薦理由

 土居秀幸氏 は、主に水域生態系における生物群集の構造や動態を多様な解析手法を用いて解明する研究を推し進め顕著な成果を挙げてきた。それらの特徴的な側面は従来の地域的な観察・実験では得られない広域・長期間の群集動態を安定同位体比や環境DNAの情報を用いた解析によって明らかにしていく手法にある。時空間的に大規模なデータを用いたメタ解析や因果推論、数値シミュレーションなど、情報学的手法を取り入れた解析の切り口は、生物群集の動態、食物網の構造、生態系機能と生態系サービス、生物群集の気候変動への応答、遺伝的多様性など多岐にわたり、水域生態系の構造と生物群集の動態を俯瞰的に解明しようとする努力は賞賛に値する。それらの成果はPLOS ONE、Proceedings of the National Academy of Sciences、Freshwater Biologyなど、学術的に評価の高い専門誌に多数公表されており、これまでに発表された学術論文等の被引用回数は9500回を超える(Google Scholar, April 2025)。
そのなかで生態学的に特筆すべき業績として、長年にわたって議論が続けられてきた食物連鎖長の決定要因について、生産性と生態系の大きさが規定要因として重要だとする生産的空間仮説を支持する検証データをため池における安定同位体比解析によって示したことが挙げられる。さらに、この食物連鎖長に捕食者の侵入などの生態学的な履歴、いわゆる生態系の歴史性が重要な決定要因となることを実験で示した。
こうした基礎生態学的な知見と研究経験は、食物網構造がどのようにその群集の全生物生産に影響を与えるかについての研究を通して、水産資源の管理や水域の生物多様性保全などの応用に寄与する研究にも活かされている。
近年は、この文脈で環境DNAを用いた調査手法の開発を積極的に進め、水域生態系の網羅的な生物群集解析、遺伝的多様性の新たな調査手法の開発と社会実装に向けた普及に尽力している。加えて、解析型AIの技術を生態系の構造や動態の解析に応用したり、モデリングの技術を発展させることによる生態系のデジタルツインの実現を目指すことにも意欲的で、新しい生態学の展開を牽引することが期待される。
以上のことから、土居氏のこれまでの研究は学術的な貢献と社会的な貢献の両面から高く評価することができ、生態学琵琶湖賞にふさわしいと判断され、第23回生態学琵琶湖賞受賞者に推薦することとした。

選考の経緯

 第23回生態学琵琶湖賞には、日本人3名と外国人1名の応募があり、選考は運営委員長より任命された7名の選考委員により行われた。選考作業は令和7年2月7日より電子メールを用いて開始した。まず、応募者の応募書類を選考委員が精査し、今回応募があった候補者の専門分野が、全て生態学琵琶湖賞の募集要件の範疇であることを認めた。次に、応募書類に記載の研究論文、著書等の出版数、被引用回数等の統計値、研究の内容説明等の記述を基に一次審査を実施した。その後、令和7年4月4日にオンライン会議を開催し、一次審査に基づいて日本人2名と外国人1名に候補者を絞り、さらに詳細な業績の評価と候補者としての適格性に関する審査を行った。その結果、本選考委員会は、研究成果の学術的・社会的貢献度の高さと、新しい手法を用いた今後の研究の発展性を評価し、1名の受賞候補者を運営委員会に具申することとした。なお、今回候補者として推薦するに至らなかった1名の日本人研究者と1名の外国人研究者は、いずれも一定の優秀な研究業績を有し、且つ将来性の認められる方々であったことを付記する。

選考委員会メンバー:大手信人(委員長)、津田敦、德地直子、中井克樹、陀安一郎、亀田佳代子、吉田丈人

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