日本生態学会

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会長からのメッセージ -その7-

「IUCN総会と韓国生態学会」

 2012年9月6日から14日にかけて、韓国済州島にて世界自然保護会議(World Conservation Congress)が開かれた。私は韓国木浦大学の洪善基教授に招かれ、10日夕方の「Island Biocultural Diversity Initiative: Value, Sustainability and Networking」というセッションで講演した。同時に"Strengthening Biocultural Diversity and Traditional Ecological Knowledge in Asia-Pacific Island Regions"というMotion案を動議し、10日午前中にIUCN総会で採択された(写真3はその電子投票の様子)。同日夕方のセッションはかなり盛況だった(写真2)。洪さんは生物多様性とそれを生かす地域の文化の多様性が密接不可分であり、特に、島嶼においては、気候変動と自然災害に対して脆弱であり、それを保全するための活動の重要性が指摘した。

 その夜の懇親会は刺身から始まった。韓国生態学会の前会長任炳善氏(木浦大学副学長、写真1)、現会長崔基龍氏(Kee-Ryong Choi, Ulsan大学)、次期会長曺度純氏(Do-Soon Cho, 韓国カトリック大学)が集まる、錚錚たる顔ぶれだった。

 洪さんとChoさんは韓国のユネスコMAB(人間と生物圏)計画でも活躍している。私もMAB計画の日本での振興に努めており、旧知の間柄であった。2011年9月には洪さんたちが主催した韓国Shinan Dadohae(新安多島海)での東アジア生物圏保存地域ネットワーク会議に私も参加し、両人に大変お世話になった。日本生態学会自然保護専門委員会幹事でMAB担当になった井田秀行さんも参加した。WCC期間中の12日には、島の北東部にできたばかりの済州世界遺産センターで第2回世界島嶼沿岸生物圏保存地域ネットワーク(Global Island and Coastal Biosphere Reserve Network)会議に、屋久島と新安多島海の代表も招かれ、私もその場に洪さんの車で参加した。その座長を曺さんが務めていた。洪さんはさらに、東アジア生態学会連合(EAFES)でも韓国の執行委員を務めている。今年から私がEAFES会長になったから、その点でも大変お世話になっている。

 私は参加できなかったが、WCCでは9日にAP-BON(アジア太平洋生物多様性観測ネットワーク)のセッションもあり、Motionも採択された。AP-BONのセッションを主に担ったのは韓国ではこれも韓国生態学会元会長にして東アジア生態学会連合(EAFES)前会長である金恩植氏(Eun-Shik Kim、ILTER東アジア太平洋ネットワーク座長)、日本では矢原元生態学会長(AP-BON共同議長)であった。

 現会長の崔さんは東北大学で、洪さんは広島大学で学位をとり、日本語が堪能だ。大変心強い友を持ち、WCCでは大変助かった。

 韓国生態学会員の大半は、植物の専門家という。韓国にはユネスコMAB国際調整理事会前議長の崔清一氏(Chun-Il Choi)のような陸水学者もいる。鳥や哺乳類の専門家、害虫や水産分野にも生態学関係の専門家は多々いるはずだ。今後、多様な生態学の諸問題や社会的要請にこたえる上で、多様な分類群の生態学者の連携は欠かせないだろう。日本の生態学者から、それぞれの分野の韓国の専門家に、韓国生態学会への結集を勧める手もあるだろう。 (以上)

懇親会

写真1 左列前から松田、韓国生態学会元会長任炳善氏、右列前から次期会長曺度純氏、現会長崔基龍氏(2012年9月10日)

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セッション

写真2 済州島WCCのセッションで趣旨説明をする洪善基氏(2012年9月10日)

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電子投票

写真3 済州島WCC総会での生物文化多様性のMotionの電子投票による採択の様子(2012年9月10日)

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