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企画集会 T01
メタ群集とは、生息地間の個体の移動分散によって相互作用している局所群集の集まりと定義される。自然界の生物群集の多くは他の生物群集と生物個体や物質のやりとりをしている開放系である。したがって、生物群集の構造や動態が示すパターンを記述したり、その決定プロセスを研究するにはメタ群集という概念が有効となる。とりわけ複数の空間スケールを横断する研究にはメタ群集概念が不可欠である。保全生物学においても、例えば生息地分断化が個々の種や生物群集全体に与える影響を予測するうえで、メタ群集概念は重要な示唆を与えることができるだろう。
メタ群集研究においては、(1)生息地間の環境勾配に対応した生物間相互作用の変化、(2)生息地間の生物の移動の程度、の二つが群集構造の決定に強く影響すると考えられている。しかし野外では、生息地間の環境勾配や生物間相互作用、生息地の空間構造、生物の分散能力などを正確に評価するのは困難である場合が多い。そのためメタ群集研究では、理論研究の先行が顕著である。本集会では、地域多様性の違いや生物による物質輸送を考慮した現実に近いメタ群集を表現した理論モデルや、景観構造の変化や生物の行動特性が群集構造に及ぼす影響やメタ群集における食物網動態を扱った実証研究の紹介を通して、理論研究と実証研究のギャップを埋めることを目指す。
コメンテーター:宮下直(東大・農学生命)、野田隆史(北大・地球環境)
[T01-1] 趣旨説明:メタ群集という概念
[T01-2] ガンマ多様性はメタ群集の存続可能性を高めるか?
[T01-3] 細菌のメタ群集動態と生物ポンプ:鉛直混合モデル
[T01-4] 部分食物網と食物網:メタ群集の視点から食物網を考える
[T01-5] 琵琶湖周辺内湖における大型動物プランクトンの群集構造:湖内環境と空間ネットワークの影響
[T01-6] ランドスケープスケールでの行動特性が水域へのトンボの移入に与える影響