| 要旨トップ | ESJ56 企画集会 一覧 | 日本生態学会第56回全国大会 (2009年3月,盛岡) 講演要旨


企画集会 T28 -- 3月21日12:00-14:00 H会場

迅速な適応性−新しい次元の進化生態学

企画者: 嶋田 正和 (東大・総合文化・広域)

迅速な適応性−新しい次元の進化生態学

企画者:嶋田 正和(東大・総合文化・広域)

進化生態学では、遺伝子発現の調節や脳−神経系が司る学習行動や表現型可塑性の生理的適応は、従来、至近要因として片づけられ、進化生態学は究極要因(適応度と自然選択による進化)を研究する学問である、と教えている教科書もある。しかし最近、遺伝的同化説(West-Eberhard 2003)や促進的表現型変異説(Kirschner and Gerhart 2005)が台頭してきた。これらは、行動的適応や生理的適応が遺伝システムの中に取り込まれる生物学的メカニズムに基づく説明であり、20世紀前半に活躍したBaldwinやSchmalhausenからWaddingtonを経た系譜である。学習行動や表現型可塑性に基盤を持つ迅速な適応性は、引いては表現型を支える遺伝的変異に自然選択がかかることで、突然変異−自然選択だけの古典学説よりも、ずっと速い進化的適応をもたらすようになる。

このように、「適応性」にはさまざまな時間スケールの生物学的機構が関与している。学習行動や表現型可塑性と適応進化の両方を取り込んだ個体群動態や進化の理解が必要となるだろう。今回は4人の講演者が迅速な適応性のご自身の研究を紹介し、新しい次元の進化生態学の意義を、聴衆も含めて討論してみたい。

(1件の講演25分+質疑応答5分=計30分)

[T28-1] 迅速な適応性:新しい次元の進化生態学−趣旨説明 嶋田 正和(東大・総合文化・広域)

[T28-2] 社会性昆虫のコロニーの迅速な適応:階級分化と労働分業の可塑性 柴尾 晴信(東大・総合文化・広域)

[T28-3] 捕食者と被食者の迅速な適応:両棲類幼生の表現型可塑性 岸田 治(京大・生態研)

[T28-4] 迅速な適応が生みだす相互作用の変化とその影響:プランクトン性藻類の事例 吉田 丈人(東大・総合文化・広域)


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