| 要旨トップ | ESJ66 自由集会 一覧 | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨
ESJ66 Abstract


自由集会 W02  3月15日 17:00-18:30 Room B

ミクロ視点からの動物行動学:形態・生理機能の多様性が生み出す動物の多様な行動様式
A ‘fine-scale' ethology: Behavioral patterns driven by morphological/physiological diversities

吉田誠(国立環境研究所琵琶湖分室)
Makoto A. Yoshida(NIES Lake Biwa Branch Office)

 野外で動物を観察するとき、まず最初に私たちの目を引くのはかれらの「動き」であろう。動物たちは、エサをとり、敵から逃れ、子を残すために、日々環境中を動き回り、さまざまな活動を行なっている。短い時間スケールでみると、かれらの活動は一瞬一瞬の「動き」の積み重ねとして捉えられる。こうした「動き」の最中、動物の体表面では、周囲をとりまく物質との物理的な相互作用を通じて、動きの起こる方向とエネルギー的な損失が規定される。つまり、動物の外部形態は、「動き」を通じて個体の活動コストに影響すると言える。また、長期的な視点からは、活動の起こる時空間的な範囲を決める要因として、内部生理(代謝)も重要である。動物は自身の生存に支障が出ないよう、周囲の環境に応じた体内での生理的調節と、行動調節とを並行して行なう。一見、自由にふるまうように見える野外での動物の行動は、実はこうした形態的・生理的な制約の下で起こっていると捉えることができる。

 本集会では、動物の行動様式を、上述した「形態」「代謝」の2つの視点から読み解く試みを紹介する。まず、潜水性の海鳥のくちばしにみられる特徴的な形態に着目した研究を題材として、形態のもつ生態学的な帰結について話題提供する(菊地)。次いで、個体間でみられる生理的な代謝調節の違いが、同種内に異なる活動様式をもつ集団を生み出した事例を報告する(木下・阿部)。さらに、体温調節の観点から、外洋性魚類の鉛直移動の様式を規定する生理的な制約に迫った研究について紹介する(中村)。以上をふまえて、形態や生理機能というミクロな視点からマクロな行動様式を説明する試みの現状と課題を整理するとともに、現象の遺伝的な基盤や系統進化との連関を探る方法論、気候変動との関係性など、将来的な展開について講演者も交えて議論したい。

[W02-1]
流体力学と動物行動学の間 菊地デイル万次郎(東工大・工学院機械系)
Interface between fluid dynamics and ethology Dale M. Kikuchi(Tokyo Inst. of Technology)

[W02-2]
同じ種なのにここまで違う −外温動物に見られる代謝の多様性− 木下千尋(東大・大気海洋研)
Intraspecific diversity of the metabolism in ectothermic animals Chihiro Kinoshita(AORI, The Univ. of Tokyo)

[W02-3]
変動する水温環境における魚類の代謝調節—秋に来るサケ、冬にくるサケ 阿部貴晃(東大・大気海洋研)
Physiological and/or behavioral regulation of metabolism in fish against fluctuating environmental temperature – Perspectives from chum salmon Takaaki Abe(AORI, The Univ. of Tokyo)

[W02-4]
魚はなぜ潜る?餌と適温のミスマッチが起こす魚の行動 中村乙水(長崎大・海洋センター)
Why do fish dive? Behavior of fish caused by a mismatch between food and temperature Itsumi Nakamura(ECSER, Nagasaki Univ.)


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