| 要旨トップ | ESJ67 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


シンポジウム S09  3月5日 17:00-20:00 Room C

大規模モニタリングが捉えた生物多様性危機 -生物種の急激な減少とその保全に向けて-
Biodiversity Crisis in Japan Revealed by Large-scale Monitoring Data –The Decrease of Common Species and an Urgent Need for Their Conservation–

後藤なな((公財)日本自然保護協会), 藤田卓((公財)日本自然保護協会)
Nana GOTO(the Nature Conservation Society of Japan), Taku FUJITA(the Nature Conservation Society of Japan)

2018年10月に発表されたWWFのLiving Planet Report 2018では「過去40年間で野生生物の個体数が60 %減少」と報告され、2019年5月には国際機関IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学-政策プラットフォーム)によって「100万種が絶滅の危機」という衝撃的なメッセージが発表された。今回、環境省生物多様性センターが実施する「重要生態系監視地域モニタリング推進事業(以下、モニタリングサイト1000)」において、これまでに得られた約10年間の全国データを解析した結果、世界的な生物相の減少と同様に、日本においても、身近な生物種の多くが減少傾向にあることが示された。
この危機的な状況を受けて、研究者、行政、そして市民やNGOがより一層積極的に保全に向けて取り組んでいく必要があり、その上でもこれまでに得られたデータの活用推進が求められる。しかし、現実的な課題として、これまでのデータ使用例は一部の研究者や行政担当者のみと限られていた。さらに、現場の保全を実現するためには、モニタリングサイト1000で得られる生物多様性の状態(Status)のみのデータだけではなく、減少に対する圧迫要因(Pressure)の解明や効果的な保全策(Response)の評価も明確にしていく必要がある。
本シンポジウムでは、まずモニタリングサイト1000のこれまでのデータから捉えられた日本の生物多様性の変化について報告する。そして、こうした結果を受け、現場での保全の実現に向けて、どのようにデータから保全にアプローチできるか、NGO・行政・研究者のそれぞれの立場から、現場のニーズや現実における障壁も踏まえて講演し、会場とともに議論する。

コメント:
天野 達也(クイーンズランド大学)
曽宮 和夫(環境省自然環境局生物多様性センター)

[S09-1]
全国の市民調査がとらえた里山の普通種の急激な減少 *藤田卓(日本自然保護協会)
Crisis of common species in SATOYAMA ecosystem in Japan revealed by nationwide citizen science "Monitoring sites 1000 SATOYAMA program" *Taku FUJITA(NACS-J)

[S09-2]
広域調査から見えてきた鳥類の変化 *植田睦之, 守屋年史(バードリサーチ)
Changes in bird abundance in Japan - patterns emerged from national surveys *Mutsuyuki UETA, Toshifumi MORIYA(Bird Research)

[S09-3]
データ活用の可能性① 鳥類の種数・個体数と景観特性の解明およびトレンド推定 *片山直樹(農研機構)
Understanding the relationships between bird diversity and landscape-scale factors and population trends of birds *Naoki KATAYAMA(NARO)

[S09-4]
データ活用の可能性② 生物種の動態と保全策をつなぐ *赤坂宗光(東京農工大学)
Connecting large-scale monitoring and conservation implementation *Munemitsu AKASAKA(TUAT)

[S09-5]
科学情報を踏まえた生物多様性政策の推進 *中澤圭一(環境省)
Science based Biodiversity Policy and implementation *Keiichi NAKAZAWA(Ministry of the Environment)

[S09-6]
現場の保全とデータをいかにつなげるか:地域の現場で求められるデータ活用とは *後藤なな(日本自然保護協会)
Connecting conservation activities and monitoring data -How to apply the data to local activities- *Nana GOTO(NACS-J)


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