| 要旨トップ | ESJ67 自由集会 一覧 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract


自由集会 W03  3月4日 17:00-18:30 Room F

高山を利用するニホンジカ:環境利用と行動追跡から探る
Sika deer in alpine regions: Exploring with habitat use and GPS tracking.

尾関雅章(長野県環境保全研究所), 黒江美紗子(長野県自然保護課)
Masaaki OZEKI(Nagano Env. Cons. Res. Inst.), Misako KUROE(Nagano Pref. Nature Cons. Div.)

急傾斜地が多く多雪なことから,これまでニホンジカが棲みにくいと考えられてきた高山へシカが進出している.標高3000m級の山が連なる日本三大アルプスでも,高標高域へのニホンジカ進出が相次いでいる.長年シカの採食にさらされてこなかったこれらの高山では、シカの進出が生態系に大きな影響を及ぼしている.まず初めに南アルプス亜高山帯でシカが目撃されるようになり、1990年代末にはこれまで維持されてきた高山植生や「お花畑」が激変・消失した。2010年代には,北アルプスの稜線付近でもシカが目撃されるようになり,高標高域へ進出は現在も進行中である.一方で,島の約9割が急峻な山地である屋久島では,ヤクシカはかつて奥山の動物として知られており,季節を通して山岳地に生息している個体が多い.本集会では,シカによる山岳利用が大きく異なる、屋久島、南アルプス北部、北アルプスの3つの高山について、現地をよく知るフィールド研究者からシカの行動や生態を紹介し,今後の生態系保全に向けた意見交換や行動学的な面白さを味わう場としたい.
集会ではまず企画者の尾関より、シカの進出先である高山に広がる生態系について、また各地の高山におけるシカ生息状況について紹介する。次に,急峻な地形に囲まれた高山環境を利用するシカの生態や行動について,現地での植生観察,捕獲,個体追跡から迫った各演者の研究成果を紹介する.季節を通して宮之浦岳山頂に留まるヤクシカ、積雪により利用場所を大きく移動させながらも毎年亜高山帯に出没する南アルプスのニホンジカ、世代交代しつつ黒部ダムや剱沢など険しい北アルプスを開拓している分布前線のニホンジカ、こうした逞しいシカたちが,どのような場所を通り何を食べているのか,高山を利用するシカについて最新の知見を紹介する.
※山の地図を持って参加されるとより楽しいと思います.

[W03-1]
屋久島山頂部のシカの環境利用 *本田剛章, 半谷吾郎(京都大学霊長類研究所)
The habitat utilization of deer living in the summit area of Yakushima. *Takeaki HONDA, Goro HANYA(Primate Res. Inst. Kyoto Univ.)

[W03-2]
南アルプス北部におけるニホンジカの季節移動 *瀧井暁子, 泉山茂之(信州大学山岳科学拠点)
Seasonal migrations of sika deer in the northern part of Southern Japan Alps. *Akiko TAKII, Shigeyuki IZUMIYAMA(Shinshu Univ. IMS)

[W03-3]
北アルプスに生息するニホンジカの季節移動 *泉山茂之, 瀧井暁子(信州大学山岳科学拠点)
Seasonal migrations of sika deer inhabiting in Northern Japan Alps. *Shigeyuki IZUMIYAMA, Akiko TAKII(Shinshu Univ. IMS)


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