| 要旨トップ | ESJ69 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
シンポジウム S14 3月18日 9:00-12:00 Room E, オンライン開催/見逃し配信対応/現地会場あり
行動生態学はこれまで、神経系を持つ生物を対象として発展してきた。デイビス・クレブス・ウェストの教科書を見ても、神経系を持たない生物(植物・微生物など)に関する記述は、細胞性粘菌やバクテリアの血縁度と協力行動やクオラムセンシングなどに限られ、全500ページ以上のうちたった12ページにしかならない。一方で、植物の多様な行動については90年代から行動生態学的視点が導入され、近年では植物のコミュニケーションや知能に関する研究も盛んに行われている。微生物の行動に関する一般的な研究は遅れているが、変形菌を用いた研究ではめざましい成果が得られている。微生物は小さく目に見えにくいという欠点はあるが、逆に小さい系での培養が可能であることから、観察方法さえ工夫すれば行動の記述が容易であり、大規模な基礎研究や奇抜な応用研究などの可能性を秘めている。近年、バイオイメージング技術の急速な発達により、植物や微生物の行動生態学が大きく発展する基盤が整いつつある。このシンポジウムでは、神経系を持たない生物の中から、植物、変形菌、原生動物、バクテリア、菌類を対象として行動や情報伝達について研究されている講演者の方々に話題提供いただく。内容は情報伝達の生理的なメカニズムから生物間相互作用、生物コンピュータへの応用まで多岐にわたる。神経系を進化させず、私たち人間とは全く異なる論理で生きている生物たちの行動を理解し、そこから学ぶことは、人間の環境認識や科学技術にイノベーションをもたらす上で非常に有用だと思う。
[S14-1]
カルシウムシグナルを介した植物内・植物間情報伝達の可視化
Visualization of calcium-based intra- and inter-plant communication
[S14-2]
菌類の菌糸体に見られる記憶と決断
Memory and decision in fungal mycelia
[S14-3]
モジホコリ変形体の餌配置場所依存的な輸送網形成にみる環境適応行動の評価と仕組み
Evaluation and mechanism of adaptive behavior in the formation of transport network depending on the food-locations by Physarum plasmodium
[S14-4]
菌糸の高速道路と細菌が払う通行料
Fungal-bacterial symbiotic interaction: Fungal highway and bacterial toll
[S14-5]
テトラヒメナ個体群が持つ情報処理能力の定量化とその利用
Quantification and utilization of the information processing capacity of Tetrahymena population dynamics