第5回(2007年)日本生態学会賞受賞者
山村 則男(京都大学生態学研究センター・教授)
選考理由
京都大学生態学研究センター教授・山村則男博士は日本を代表する数理生態学者の1人であり、採餌戦略、繁殖戦略、性選択、社会行動などの行動生態学的研究で優れた業績を上げている。例えば、フンバエの最適交尾時間に関するG. A. Parkerの有名な研究の矛盾点に気づき、交尾時間や採餌時間を最適化モデルではなくESSで説明した論文は国際的にも高い評価を受けている。また、他の生態学分野の研究者とも積極的に協同し、種分化機構、種間関係、生物多様性などに関する研究でも独自のモデルを組み込み、優れた成果を数多く上げている。これらの成果は71編の原著論文としてNature、Ecology、Evolution、American Naturalist、TREE、Ecological Researchなどの国際誌に発表されている。
さらに、ゲーム理論を生態学に応用したメイナードスミスに学び、その手法を逸早く日本に紹介した研究者であり、進化的安定戦略理論に関する日本の第一人者と評価されている。ゲーム理論を含む数理モデルを分かり易く解説する能力に長け、「繁殖戦略の数理モデル」や「動物生態学」などの著書を通じて多くの野外生態学者に数理モデルの有効性を理解させてきた貢献度は極めて大きい。
日本生態学会賞選考委員会は、行動生態学やその他の生態学分野における独創的な理論研究および啓蒙活動における大きな貢献を高く評価し、山村則男博士を日本生態学会賞受賞候補者として選考したことを報告する。
選考委員:東正剛(委員長)、粕谷英一、工藤岳、柴田銃江、竹中明夫、松田裕之