第6回(2008年)日本生態学会賞
該当者なし
選考経過並びに日本生態学会賞選考に関する提言
今回は4名もの被推薦者に恵まれた。いずれも本学会の第一線で活躍されている優れた研究者であり、かつ、研究業績だけでなく、後進の指導、学界活動や社会貢献においても献身的で多大な貢献をした被推薦者が含まれていた。にもかかわらず、該当者なしとする残念な結果となった。評価基準について再度議論した結果、生態学の普及・発展に特に目覚ましい貢献を顕彰する賞としては本学会に功労賞が既にあり、あくまでも「生態学の深化や新たな研究展開に指導的役割」という観点で評価したとき,応募はされていないけれどもより高い優先順位で受賞すべき方々が他にいらっしゃるのではないか,といった議論があった.そのうえで投票を行ったところ、残念ながら、全員一致で該当者なしとする結論を得た。今後は適切な候補者が漏れなく選考対象となるような具体的な制度改革が必要である。
そこで、以下の2つの選考過程の改定案を提案する。
- 今までの他薦による推薦に加えて、候補者名だけでもよいから、選挙で選ばれた全国委員(本選考委員を含む?)一人一人に1名以上の候補者を挙げていただき、票数などを伏せた上で被推薦者リストを選考委員会での選考対象とする。
- 詳しい推薦理由がなければ評価できないことから、また本賞は膨大な研究業績を持つ者が対象となることから、審査委員以外に内々に意見を聞く外部レビューを認める。
これらの改定により、より広い被推薦者を選考対象とし、かつ、詳しい評価報告を踏まえた選考が可能になるものと思われる。あるいは、過去の被推薦者については数年間に限り自動的に選考対象とする案も出された。今回もこれらの制度を適用するよう動議が出されたが、推薦〆切後に今回の推薦制度を変えることは、常任委員会などの承認が必要なことを考えると非現実的であるとの理由で見送られた。
第3回選考委員会の選考経緯 によれば、この改定案が想定する被推薦者は全国委員などを務めていると思われ、「『互選』のようになってしまう」という欠点をもつとされるが、いまだに推薦委員会が実現していない経緯に鑑み、現行の推薦制度と併用することにより、最も現実的な方法と思われる。
また、このほかに、学会賞は他の2賞と異なり、自薦他薦だけでは候補者を募ることができないこと、業績評価が多岐にわたることから、9名の委員を選んでも全員で議論する以上各賞選定時に要する議論の時間が短縮できるわけではない。そのため、学会賞選考委員と他の2賞の選考委員を分けるべきであるとの意見があった。
また、今後は9名の委員を同時に招集することには困難が予想される。多くの委員を維持するよりも、外部レビューを活用するほうが有効と思われる。
さらに、功労賞と学会賞、宮地賞と大島賞の違いが会員によく理解されていないことがある。それぞれの賞について細則を設けるだけでなく、各賞の性格が同時にわかるような形で推薦を募る文章が必要であろう。
最後に、これは宮地賞、大島賞にも該当するが、選に漏れた推薦者にも落選理由を周知すべきという意見もあった。繰り返し応募することで受賞する可能性の高い被推薦者の機会は維持すべきである。
選考委員:松田裕之(委員長)、粕谷英一、河田雅圭、工藤岳、齊藤隆、柴田銃江、杉本敦子、竹中明夫、東正剛