日本生態学会

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第3回(1999年)日本生態学会宮地賞

受賞者:辻 和希(富山大学理学部・助手)
    谷内茂雄(京都大学生態学研究センター・特別研究員)


選考経緯および選考理由

 今回は応募を締め切った時点で2名の応募者がありました.2名とも他薦でした.両候補者の主要論文のコピーを賞選考委員7名に送り,委員会の前にあらかじめ目を通していただきました.1998年10月8日,東京大学教養学部にて選考委員会を開催し,4名の委員(堀,矢原,可知,大串)の出席のもとに,両候補者の研究業績,仕事の生態学における意義,日本生態学会での活動,宮地賞受賞者候補者としての適性などを含むあらゆる側面について慎重に審議を行い,全員の一致をもって,両名とも宮地賞受賞者としてふさわしいという結論に至りました.なおこの結論は,欠席委員の2名(武田,大沢)からあらかじめ寄せられた意見とも一致するものでした.

 辻和希さんは,実証的なデータと理論的な説明を用いて,社会性昆虫であるアリ類の社会構造とその進化についてさまざまな現象を明らかにされました.特に,コロニーレヴェルと個体レヴェルでの自然選択の測定と両者の意義,性比理論の検討,繁殖をめぐる協同と競争のコンフリクト,生活史戦略の進化など,これまで社会生物学が扱ってきた重要な理論の検証とその発展に大きく寄与されています.また,日本における,社会性昆虫の社会生物学の理論的研究を担う若手の代表として高く評価されています.

 谷内茂雄さんは,これまえで理論的な説明の与えられていなかった捕食者に対する餌動物のシグナルの初期進化の問題点について,簡潔かつ巧妙な数理モデルにより,その論理をみごとに解明されました.また,疫病の伝播モデルや,最近では,植物群集の生産性と多様性の関係についてのモデルも手がけており,今後さまざまな生態現象への数理モデルの適用による理論研究の発展が大いに期待されます.

 両名とも,その成果を一流の国際学術誌に執筆しておられ,日本生態学会が誇る生態学研究者であると判断いたします.

第3回日本生態学会宮地賞受賞候補者選考委員会委員長  大串 隆之
1999年3月29日

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