日本生態学会

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第6回(2002年)日本生態学会宮地賞受賞者

宮竹貴久(岡山大学農学部・助教授)
鎌田直人(金沢大学大学院研究科・助教授)


選考経緯および選考理由

 2001年10月13日(土)に東京大学農学部1号館会議室において、選考委員全員出席のもとに第6回(2002年度)「日本生態学会宮地賞」受賞候補者選考委員会が開催されました。応募者4氏のそれぞれの生態学における業績を考量した結果、選考委員会としては次の2氏を第6回(2002年度)「日本生態学会宮地賞」受賞候補として選定いたしましたので選定理由とともにご報告いたします。

宮竹貴久氏
 分断選択を受けたウリミバエ集団間の生殖隔離機構が時計遺伝子の多面発現による交尾開始時刻のずれによるものであることを分子遺伝学的、生態学的手法を組み合わせて明らかにした研究は、種分化には欠かせない生殖隔離が選択の結果として生じうること、それが遺伝子の多面発現を介したものであることを明瞭に具体的に示した研究として生態学の発展に大きく貢献するものである。その研究については国際的にも高い評価を受けており、近年、種分化に関する書籍や総説に頻繁に引用されている。また、害虫駆除事業という実践的な現場での仕事を生態学の新たな展開にもつながる基礎科学的な業績の契機とした点も高く評価される。

鎌田直人氏
 ブナアオシャチホコガはおよそ11年周期で大発生し、ブナの葉を旺盛に摂食してブナ林に大きな被害を与える害虫である。そのブナアオシャチホコの個体群動態を15年以上にわたって追跡し、その変動要因を植物の防御機構、捕食者や病害生物との生物間相互作用などの点から整理した鎌田氏の研究は、日本の生態学における個体群長期変動研究の先駆けとして宮地賞受賞に値するものである。今後さらに研究を発展させ、これまでの研究で抽出された変動要因が実際にどのように係わりあいながら11年の周期をつくりだすのかをより定量的に明らかにし、個体群長期変動研究分野を引き続きリードしていくことを期待したい。

 宮地賞の受賞は毎年2名以内と決められています(細則第1条)。今回選にもれた2名の応募者についても、選考委員会としては、今後さらに業績を重ねることで宮地賞の受賞に値するものと考えています。今回およびこれまでの選考において選にもれた候補者にも、次回以降の宮地賞への再度の応募・推薦を強く奨めたいと思います。また、選考委員会は、現在の生態学会には宮地賞の受賞の対象となる若手が多数存在するにもかかわらず、応募されていないという認識をもっています。一方で、生物科学における生態学の地位をより確固としたものにしていくためには若手の受賞者をより多く輩出することが必須であると考えています。全国委員の皆様には、次回以降の募集に際して若手に積極的に応募を促すだけでなく、候補者をご推薦をくださいますようお願い申し上げます。

選考委員  巖佐庸 粕谷英一 中静透 松田裕之 松本忠夫 鷲谷いづみ(委員長)

第6回日本生態学会宮地賞受賞候補者選考委員会委員長  鷲谷 いづみ
2002年3月28日

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