日本生態学会

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第11回(2007年) 日本生態学会宮地賞受賞者

大園享司(京都大学大学院農学研究科)
佐竹暁子(Dept. of Ecology and Evolutionary Biology, Princeton University)


選考理由

大園享司氏
 落葉落枝などの有機物の分解は、森林生態系の炭素や養分循環と深く結びついており、生態学における非常に重要な研究分野であるにも拘らず、いまだ不明な部分が多い。大園享司氏は、有機物分解における物質動態の視点から、温帯林における落葉の分解過程と分解に関わる菌類の生理生態的な試験を、多種多様な樹種と菌類について約10年間地道に継続してきた。それによって、様々な落葉の分解過程をリグニンや窒素などの構成比から統一的に把握した一方で、分解にともなう菌類群の遷移と落葉構成成分の変化の相互関係を実証的に示した。そして、落葉分解が進むにつれて有機物構成成分比(リグニン/セルロース比やリグニン/窒素比など)が異なる樹種間で収斂するメカニズムを、分解の各段階に関与する菌類群集の資源利用様式の違いによって説明した。成果は、Ecological Research誌をはじめ、Canadian Journal of Botany, Mycoscience誌などなどの学術誌に45編に及ぶ原著論文として掲載されている。複雑な有機物分解のメカニズムを丁寧に解きほぐしたこれら一連の研究は、森林生態系のしくみを理解する上で大きな前進と言える。
 宮地賞選考委員会は、生態系における物質循環の中で重要であるにもかかわらず研究が遅れている分解系の問題と取り組む大園氏の業績を高く評価し、同氏を宮地賞受賞候補者として選定した。

佐竹暁子氏
 樹木の資源収支動態をモデル化してシュミレーションを行うと、カオス的・非同調的応答が発生するが、実際の森林では樹木間の同調性が広い範囲でみられる。佐竹暁子氏は、この広域同調の原因の1つとして送粉系に着目し、樹木の繁殖が花粉不足を通じて空間的に同調することを理論的に示した。このカオス結合系モデルは、ノルウェーの長期モニタリングデータを用いた実証研究や捕食者の影響を考慮した研究へと発展し、その研究成果はOikos、American Naturalist、Ecology、Journal of Ecology、Journal of Theoretical Biology、Ecological Researchなどに掲載されている。それらの論文は内外の多くの野外及び理論研究者に引用され、それを通じて佐竹氏の研究はさらに発展し、今や森林動態論における重要なモデルの1つとなっている。このように、佐竹氏の一連の研究は理論と野外研究の相互作用が成功をおさめた典型的なモデルケースとしても高く評価できる。
 宮地賞選考委員会は、佐竹暁子氏によるカオス結合系モデルの開発とその応用的成果を高く評価し、同氏を宮地賞受賞候補者として選定した。

選考委員:東正剛(委員長)、粕谷英一、工藤岳、柴田銃江、竹中明夫、松田裕之

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