日本生態学会

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第2回(2014年) 日本生態学会奨励賞(鈴木賞)受賞者

飯田 佳子(ミシガン州立大学植物生物学部)
鈴木 俊貴(総合研究大学院大学先導科学研究科)
深谷 肇一(統計数理研究所統計思考院)


選考概要

 飯田佳子氏は、国際的プロジェクトで維持されている熱帯・亜熱帯の大規模プロットで研究を行い、樹木群集の種多様性の維持について、樹冠構造やアロメトリーの視点から、高度な統計解析技術を駆使して研究してきた。 2011年に学位を取得していているが、主著者としてすでにEcologyおよびFunctional Ecologyに論文を3編発表(印刷中含む)しているのは鈴木賞に値する優れた業績である。今後の展望としてはアジア、アメリカ大陸など多数の群集を対象にした研究などを指向しており、活躍が期待される。
 また、国際学会での発表(6件)を活発に行なっているほか、台湾国立東華大学(半年)、米国ミシガン大学(通算1年以上)に在籍している。大学院での主要な調査地もマレーシアであり、中国、台湾、マレーシアでのティーチング経験や共同研究の経験から、将来国際的なネットワークやプロジェクトで中心的役割を果たしていく可能性は大きいだろう。学会員としての活動も、2005年の入会以降6回の発表をおこない、英語でのシンポジウムも1回企画するなど、活発である。
 以上の理由から、飯田佳子氏は日本生態学会奨励賞(鈴木賞)の受賞者として相応しいと判断する。

 鈴木俊貴氏は、主に鳥類の鳴き声によるコミュニケーションと行動パターンについて研究してきた。
 特筆すべき成果として、シジュウカラはどの仲間にどの捕食者が近寄っているか、餌場はどこにあるか等、多くの異なる種類の情報を鳴き声によって伝え、鳴き声を発した個体および受け取った他個体それぞれの適応度を高めていることを証明したことがあげられる。さらに興味深いのは、コガラの混群形成における警戒声の役割について解明したものである。コガラは、食物資源をみつけると鳴き声で同種および他種個体を餌場に誘引し、その結果食物の周囲に混群を形成することで、採食効率や捕食回避効率を高めるなどの適応度上の利益を得ることを示した。
 すでに氏がこれらの業績を9編の論文としてCurrent Biology やBiology Lettersなどの国際誌に発表しているのは鈴木賞に値する優れた業績である。また、和文での総説発表や、一般市民向けの雑誌への寄稿およびアウトリーチ活動も活発に行っている点も評価できる。
 以上の理由から、鈴木俊貴氏は日本生態学会奨励賞(鈴木賞)の受賞者として相応しいと判断する。

 深谷肇一氏は、岩礁海岸の底生生物を対象に個体群および群集生態学的な研究をされてきた。
 具体的には、固着生物であるイワフジツボなどの個体群動態を、北海道から九州まで日本全土の調査地で長期間追跡することで、(1)個体群サイズの変動の大きさ、(2)個体群増加率、(3)個体群増加率を決定する生態学的な過程について、それぞれ季節性と空間変異性を複数の空間スケールで明らかにしてきた。これらの研究成果は,これまで考えられてきた以上に個体群動態の理解には季節性と空間変異性を考慮することが重要であることを明確に指摘した事例として評価できる。また、個体群の変動と平均個体群サイズの間にはどのような空間スケールであってもTaylorの冪乗則が成り立つというスケール不変な一般的な傾向を見いだしていることも興味深い。
 氏は自ら工夫して統計学的なアプローチを改良し野外観察データの分析に生かしている。このことから、分野の枠組みにとらわれず新しいアプローチを自ら開拓、改良しようとする意欲が感じられる。
 以上の成果は、Journal of Animal Ecology、 Ecosphere、 Oikos、 Ecologyなどの国際誌に印刷中も含めて5編の論文として発表されており、鈴木賞に値するすぐれた業績である。生態学会でも2007年の入会以来、毎年のように講演し、またシンポジウムと自由集会を2回企画しており、生態学会に貢献する意欲が読み取れる。
以上の理由から、深谷肇一氏は日本生態学会奨励賞(鈴木賞)の受賞者として相応しいと判断する。

選考委員会メンバー:粕谷英一,酒井章子,綿貫豊,大手信人,佐竹暁子,正木隆(委員長),大園享司,中野伸一,野田隆史

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