日本生態学会

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会長からのメッセージ -No.3-

「韓国生態学会」

 韓国生態学会が設立50周年を迎えるという。日本生態学会の設立が1953年なので日本が四半世紀ほど先輩ということになる。しかし日本生態学会は学術的にも大先輩だと胸を張って言えるだろうか。

 4月の初めにINTECOL担当理事の村岡さん、大規模長期生態学専門委員会長の中村さんとKorea University(高麗大学)とKangwon National University(江原大学)に行ってきた(ちなみに江原大がある Chuncheonの街は「冬ソナ」の舞台になったところです)。今回は生態学会を代表して行ったわけではなく、高麗大のSonさんと江原大のNohさんにホストして頂いて気候変動絡みの研究交流をすることが目的であったが、結果的に日本生態学会の立ち位置を考えさせられる良い機会となった。

 高麗大は韓国私立大学の雄として有名で10年ほど前にも訪れたことがあるが、江原大は今回が初めてだった。こぢんまりした地方大学をイメージしていたが、広々としたキャンパスに現代的な建物が立ち並ぶ様は想像を遥かに超えていた。

 現在韓国ではいわゆる「ソウル大10校構想」の元、各道ごとに一つの大学に集中投資してソウル大への一極集中を解消しながら、国全体の研究力アップを図ろうとしている。江原大もGangwon-doの国立大学としてこの対象となっていたのだ。この点日本が1949年に県ごとに国立大学を設置した「一府県一大学」の動きとは異なっており、様々な問題を抱えながらも推進されているようだ。

 日本と同様天然資源に乏しいこともあって、韓国政府は科学技術投資を未来資産とみなし最優先順位においており(韓国第5次科学技術基本計画2023-2027)、一人当たり名目GDPは韓国が日本を上回る状況がここ数年定着している。2024年時点で研究開発費のGDP比が約5%と非常に高く世界1位、人口比研究者数が世界1位など、人材と資金を科学技術に集中投資している。生態学関連では2013年に国立生態院(NIE)が設置され、韓国各地で生態系長期モニタリングや希少生物の保全を体系的に行いながらIPBESにも貢献している。

 このような背景のもと、気候変動やカーボンニュートラルと関係した森林研究もこの10年間で随分進んでいるように感じた。樹木の気候変動応答の野外実験や森林火災に関する研究などを紹介してもらったが、いずれもかなり大掛かりなものであった。朝鮮半島は全体が花崗岩に覆われ貧栄養なのに加え、春先の極度の乾燥で森林火災が頻発しており、朝鮮戦争で焼け野原になった名残りもあってミズナラやアカマツが優占する二次林に覆われている。近年日本でも大規模な森林火災が起こるようになってきているので、韓国との共同研究も双方にとって有意義なものとなるだろう。

 何より高麗大や江原大の学生たちが皆流暢な英語で活発に議論していたのが印象に残っている。森林生態学分野でも、メジャーな国際誌上で韓国人の名前を目にすることが多くなる日も近いかもしれない。韓国での数理生態学や進化生態学などの分野の状況はよく知らないので詳しい方は教えてください(琉球大の辻さんあたりがお詳しい?)。

 韓国生態学会設立50周年式典へEAFES担当の中野さんと共に招待されたのだが、スケジュールが合わず断念した。当初8月に行うと聞いていたので、夏休み中だし楽しみにしていたのだが、7月初めに変更すると連絡があり慌ててスケジュール調整したら今度はその翌週になったとメールあり。万事休す。その代わり、というわけでもないが以下のような趣旨のメッセージを送った。

「1970年代に公害問題がクローズアップされたことが、韓国生態学会が設立されたことの時代背景にあったと思われますが、気候変動と生物多様性の喪失が、今や深刻な地球規模の問題となっています。日本と韓国は、極地から熱帯にかけて連続する森林地帯である“東アジア・グリーンベルト”の中央に位置しており、世界でも有数の生物多様性に富んだ地域となっています。同時に、人口密度が極めて高いことから、両国は生物多様性のホットスポットでもあります。こうした特性を踏まえると、この地域の生態系に関する知見は世界的に重要な意義を持つものであり、隣国である日本と韓国の生態学会は、これらの課題に取り組むために互いに協力しなければなりません。」

 ついでにフィールドワークをしているあなたの写真も送りなさい、ということだったので京大の小野田さんが撮ってくれた、学術変革のキャンペーン観測の際に高所作業車に乗って林冠でニタニタしている写真を送ったら大層ウケていました。

2026年5月25日 日浦 勉

 江須崎島の森林(筑波大の津村さんとウバメガシ調査の折に2026年5月19日撮影)。スダジイやイスノキなどの照葉樹にイブキやイヌマキなどの針葉樹大径木が混交しており、木本性ツル植物も熱帯のように多く、極めて多様性が高い。地元の信仰対象でもあり、南方熊楠も保護活動に関わった天然記念物。

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