日本生態学会

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会長からのメッセージ -その8-

生物科学学会連合(生科連)の活動紹介

 皆さんは生物科学学会連合(以下、生科連)をご存じでしょうか? 聞いたことはあるが、その中身についてはよく知らない人が多いと思います。生科連は、生物学や生命科学に関連する学協会が連携して1999年に設立された組織で、現在、34団体が加盟しており、総数で8万人ほどの研究者が所属しています。物理学や化学の分野は、明治初期から日本物理学会や日本化学会という分野統合の学会がありましたが、生物学ではそうした組織がありませんでした。物理や化学に比べて内容や目的が多岐にわたるためかもしれませんが、100年以上も設立が遅れたことは少し驚きです。多くの学協会が結集した組織は様々なサイズメリットがあります。情報を共有して一緒に知恵を絞ることにより、個別の学会では解決が困難な課題を進めることができ、社会や行政に対しての影響力のある発言が行えます。2009年に当時の民主党政権が掲げた「事業仕分け」で科学技術予算の大幅な削減が提言された際に、生科連が臨時の会議を開いて抗議の声明を検討したことは、当時生態学会の連絡役をしていた私の記憶に強く残っています。

 その後もポスドクの雇用促進や若手研究者の育成などについて国へ提言を行ってきましたが、全体にやや低調な印象でした。ところが2019年に小林武彦先生が代表に就任されてからは3つの活動方針を定め、活動が活性化しました。生物科学の研究者の置かれている教育・研究環境の改善を目指す「研究費・人材育成委員会」、高校生の生物離れや大学入試問題を検討する「生物教育・大学入試問題検討委員会」、そして地球環境の悪化に伴う生物多様性減少の問題に取り組む「地球生物プロジェクト委員会」です。私は「地球生物プロジェクト委員会」の委員として小林代表のサポート役を務め、去年まで3年続けて生物多様性や生態系を題材にした公開シンポジウムを企画・実行してきました。この間、日本生態学会の会員も多数演者となり、私たちが取り組んでいる研究や社会課題を発信することができました。生科連の加盟学協会の多くは生命科学分野であるため、これまで日本生態学会はアウェイな印象が拭えませんでした。ところが地球生物プロジェクト委員会の設立と公開シンポジウムにより、生態学会が一気に主流としての役割を演じるようになったのです。

 今年から私は生科連の副代表を務め、「地球生物プロジェクト委員会」の委員長に任命されました。おもに小林前代表から引きついだ「高校生 生きものの“つぶやき”フォトコンテスト」と、公開シンポジウムを担当しています。すでに学会HPに掲載されている通り、今年度は「現代のナチュラルヒストリー研究:その挑戦と課題」というタイトルで、2024年1月20日(土)に開催されます。これはNHKの朝ドラ「らんまん」を受けて企画したものです。自然史研究の面白さに加え、自然史研究が置かれている厳しい社会状況などの課題も取り上げる予定です。東大での対面参加に加え、オンライン視聴もできます。学会員の皆さんはもとより、知り合いの方にもお声掛けいただき、多くの方にご参加いただければ幸いです。

2023年11月20日  会長 宮下 直

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