日本生態学会 第68回大会 ESJ68

公開講演会概要

■ 公開講演会

公開講演会 「環境DNAの衝撃:生き物たちの過去・現在・未来を解き明かす」

公開講演会Zoom*こちらからZoomウェビナーに参加できます(定員1000名)

日本生態学会第24回公開講演会(環境DNA学会との共同開催)

 生物多様性の保全や持続可能な生物資源の利用は人類にとっての喫緊の課題です。そのためには何よりもまず、生物の効果的な保全や管理が必要であり、最も基本的で重要な情報は、生物の生息分布域や個体数、生物量です。つまり、生物が「いつ」「どこに」「どれだけ」いるのかを迅速に把握することです。このような、簡単なようで難解な問題を一挙に解決できるポテンシャルをもつ革新的技術が「環境DNA」です。環境DNAとは、湖沼や河川などに生息する生物から脱落した組織片や糞等に由来するDNAのことであり、このDNA情報を読み解くことで、実際の捕獲を必要とせず、対象とする生物や分類群の生息状況を簡便に推定できます。この講演会では、環境DNAという最新の技術を用いることで、これまで多大な時間的・作業的労力が必要であった生物モニタリング調査を、迅速かつ簡易に実施された最新の研究事例等を紹介します。そして、一般市民や地方行政等が環境DNA情報を活用することで、特に地域の自然や希少生物の保全への利用が期待できることを紹介するとともに、環境DNA技術を広く社会に普及する機会としたいと考えています。

講演会タイトル:「環境DNAの衝撃:生き物たちの過去・現在・未来を解き明かす」
日時:2021年3月21日(日)14:30~17:00
参加費:無料

  • 事前申込は不要です。
  • Zoomウェビナーを用いて開催します。ただし、Zoomウェビナーへの接続は先着1000名までとなります。
  • 会場となるZoomウェビナーのURLは、後日大会公式ホームページ等でお知らせします。

講演者

  1. 土居 秀幸(兵庫県立大学)
    環境中に漂うDNAの情報から何がわかってきたか?

    :講演会全体の導入として、環境DNA研究の背景や概略を紹介する。基礎的な研究成果の事例紹介とともに、社会への実用化に向けた取り組みについて、いくつかの課題を整理して紹介する。
  2. 加 三千宣(愛媛大学)
    海洋堆積物コアの環境DNAから過去300年に遡って魚類生息状況を復元する

    :別府湾の海洋堆積物中に残存するイワシやマアジ等の環境DNAから、過去数百年規模の魚類個体数変動の復元に成功した研究成果について紹介する。
  3. 横山 定(岡山県立博物館)
    岡山県の絶滅危惧種や外来種の問題を環境DNAから解決策に迫る!

    :岡山県における特別天然記念物オオサンショウウオの保全と、外来種であるチュウゴクオオサンショウウオの侵入といった課題に対し、地方行政の視点からの環境DNAを用いた取り組みと今後の期待について紹介する。
  4. 宮 正樹(千葉県立中央博物館)
    バケツ一杯の水でわかる世界の海や川の魚たち:MiFish法の概要と最新情報

    :2015年に魚類環境DNAメタバーコーディング法(多種同時並列検出法)の概要を発表して以来,この技術は世界中の海や川・湖で使われるようになった。MiFish法とも呼ばれるこの技術のエッセンスを解説すると共に,MiFish法をつかってどんなことが明らかにされてきたのか最新情報を紹介する。
  5. 源 利文(神戸大学)
    環境DNA技術を感染症の分布診断に応用する

    :マラリア、デング熱、住血吸虫、病原性レプトスピラなどの感染症について、環境水等に含まれる環境DNAを調べることで、病原体やベクター生物の分布を調べて感染リスクを評価する予防診断法の確立に向けた研究事例について紹介する。
  6. 近藤 倫生(東北大学)
    環境DNA観測網がもたらす新しい生態学のかたち

    :広範囲で多地点・高頻度の生物生息情報の獲得を可能にする環境DNA技術を利用することで、生態系観測の姿はどう変わりうるか、また、生態系管理・保全といった生態情報の活用法に関する将来展望について紹介する。

後援
公益財団法人 八雲環境科学振興財団