生態系への撹乱の影響を深く理解し正確に予測するためには、当該イベントの時空間的特性や物理的作用についての正しい情報が不可欠である。巨大地震のような稀にしか生じない撹乱の場合は、その生態学的帰結についての知識が不足しているばかりか、撹乱の時空間的特性や物理的作用についても生態学者は殆ど無知であるといっても過言ではない。そこで本企画集会では、地震学者を招き、巨大地震の時空間的特性や無機環境への作用について専門家の立場から説明していただく。ついで、巨大地震が生物群集に及ぼした影響について岩礁潮間帯における事例研究を紹介する。総合討論では、これらの情報を組み合わせることで巨大地震が岩礁潮間帯生物群集に及ぼす影響についてのより深い理解をめざすとともに、地震をはじめとする大規模ながら稀にしか生じない撹乱の生態系への影響を明らかにする上での研究の方向性や展望について議論したい。

コメンテーター：近藤倫生（龍谷大）

1.　趣旨説明:大規模撹乱の生態学的帰結についての理解の意義と現状

2.　巨大地震と津波の発生メカニズムおよび沿岸環境への影響

3.　岩礁潮間帯生物群集への津波と沈降のインパクト

4.　マルチレベル撹乱：巨大地震が局所撹乱後の遷移に及ぼす影響