| 要旨トップ | ESJ63 企画集会 一覧 | | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨 ESJ63 Abstract |
企画集会 T13 -- 3月22日 9:30-11:30 RoomG
どんな強度の自然攪乱でも、樹木は枯死させるが除去しない。生物遺産(biological legacy)と呼ばれる立ち枯れ木や生立木、倒木は、攪乱跡地の生物多様性や攪乱後の生態系の回復に重要な役割を担っていることが、セントヘレンズ山の噴火やイエローストーンの山火事を扱った研究から明らかにされてきた。これにより、森林伐採が生物多様性や生態系サービスに及ぼす負の影響を低減するための一手法として、立ち枯れ木や生立木を伐採地に戦略的に維持する保残伐(retention forestry)が提案され、現在世界的に注目されている。例えば、スウェーデンではすべての皆伐地で保残伐は採用すべきとされている。
日本では戦後造成された人工林が伐期を迎える中、森林の多面的機能を維持向上させるための森林施業が求められている。北海道道有林では2013年から、保残伐施業の有効性を検証する大規模な操作実験が開始された。本実験は人工林を対象とした世界的に稀有な実験で、混交している広葉樹を保残対象としている。保残木の本数や配置が伐採後の生物多様性・生態系サービスに及ぼす影響を明らかにするため、各処理(皆伐、単木少量保残、単木中量保残、単木大量保残、群状保残、人工林非伐採区、天然林非伐採区)につき3つの繰り返しを用意し、伐採前調査を行ない、各処理区(林分)は5 ha以上としている。
本企画集会では、保残伐施業の歴史と北海道の実験の概要をまず報告する。その後、保残伐に関する国内外の既往研究を紹介する。最後に保残伐を普及させるための方法について社会経済学的から議論し、日本における保残伐の展開について考えたい。
コメンテーター:
長池卓男、森章、中村太士
[T13-1] 保残伐のレビューと北海道での大規模実験の概要
[T13-2] カナダ西海岸における保残木施業と渓流・渓畔域生態系への影響評価
[T13-3] 保残木の植栽木への影響
[T13-4] 保残伐は日本で有効か?複層林施業に学ぶ
[T13-5] 保残伐をどう普及させるか:社会経済学的視点から