日本生態学会

委員長あいさつ

前委員長のあいさつ

 4月から委員長に就任しました東大の宮下と申します。だいぶ遅くなりましたが、学会員の皆様にご挨拶申し上げます。

 キャリア支援専門委員会は、2010年10月に発足した比較的新しい委員会で、若手研究者の「キャリア支援」と「男女共同参画」の二本柱で活動しています。キャリア支援関連では、生態学を学んだ研究者が、社会の多様な分野で活躍できるよう、主に全国大会の時に企画されるキャリア支援フォーラムを通して情報提供を行っています。男女共同参画については、会員が性別にかかわらず個々の能力を最大限に発揮し、仕事とライフイベントを両立させ、社会に参画できる環境づくりを目指しています。こちらも大会時でフォーラムを開催しているほか、男女共同参画学協会連絡会と連携しながら様々な情報提供やイベントに関わっています。今年から委員会活動をより充実させるため、副委員長を2名体制にしました。うち1名を狭義のキャリア支援担当(上野祐介さん)、もう1名を男女共同参画担当(木村恵さん)にしています。また、なるべく幅広い分野や年齢の方々に活動に関わっていただくために、3年前より委員の公募を行っています。いまでは、半数近くが公募による委員を占めています。

 思えば私が学生だった頃、生態学の研究はあまり社会で役に立たない分野とされ、専門を生かした就職の道は非常に狭き門でした。その状況は、大学院重点化を経た西暦2000年あたりまで大きく変化していなかったと思います。ところが、生物多様性の社会への浸透や、持続可能な社会づくりの重要性、グリーンインフラの登場などにより、いまは状況がずいぶん変わりました。狭い意味での生態学の枠を超え、私たちの専門分野に対する社会的ニーズが非常に高まってきています。それは学術やナチュラルヒストリーの分野に留まらず、行政や民間企業、NPO・NGOなど多様な職場が受け皿になりつつあることで見てとれます。一方で、博士課程に進学する学生が最近急減し、大型研究プロジェクトの遂行が難しい状況も発生しています。こうした研究者離れは、科学立国を標榜する我が国としては由々しき問題です。その背景には諸々の社会情勢があることは確かですが、何より博士に進んだのちのキャリアパスや、仕事とライフイベントの両立に不安を感じている人が増えたことが最大の問題であると考えています。その意味から、キャリア支援専門委員会は単なる若手の就職支援のための組織ではなく、生態学に関連する学問の持続性や発展を底支えする役割を担っていると言えます。ただ、私たち委員の経験や人脈だけでできることは限られています。一人でも多くの会員の皆様からのご助言やご意見をお待ちしています。

2018年7月3日  キャリア支援専門委員会 委員長 宮下 直