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  • 公開講演会

    ここまでわかった!どんぐりの謎

    どんぐりの仲間(ブナ科植物)は日本の広葉樹林の優占種であり、日本人には大変馴染みの深い植物です。最近では、ブナ科植物についての研究が大幅に進み、10年前には全くわかっていなかった新しい知見が次々に得られてきました。分子系統学や化石の研究から、北上してきたインド亜大陸がアジア大陸に衝突しヒマラヤ山脈が形成された時期に、東南アジア熱帯山地林でブナ科植物が多様化し、その代表的なグループが日本に分布を広げた進化的な道筋が明らかとなってきました。分布の拡大とともに、開花してどんぐりを実らせる繁殖戦略や、どんぐりを捕食者から守る防衛戦略も多様化してきましたが、この多様性をもたらす仕組みが今まさに解き明かされつつあります。本公開講演会では、どんぐりの生態・進化に関するこれらの最先端の研究成果をわかりやすく伝えることで、自然観察会で解説できる知識をアップデートして豊富化するとともに、人間と森林の関わりについてこれからのあり方を市民のみなさんと一緒に考える機会を持ちたいと考えています。

    講演会タイトル  ここまでわかった!どんぐりの謎

    日時 2022年3月19日[土] 13:30~16:00

    参加登録はこちら:https://forms.gle/26QWn8K1U4XBokhx6

    ※参加費は「無料」です。

    福岡国際会議場でハイブリッド形式にて開催します。現地参加希望者の方々は、事前申し込みが必要です。後日申し込み方法の詳細をお知らせします。講演会は、Zoomウェビナーを用いてライブ中継されます。新型コロナウイルス感染症の蔓延状況によっては、オンライン開催となる場合があります。

    演題一覧

    1. どんぐりのきた道 /矢原徹一(九州オープンユニバーシティ)

    東南アジアで多くの新種を発見してきた経験をもとに、日本では見ることのできない熱帯のどんぐりの仲間を紹介します。次に、分子系統樹と化石の証拠から、どんぐりの仲間が約5億年前の造山運動の活発化とともに東南アジア山地林で多様化し、その多様な系統が日本まで分布を広げて今日の照葉樹林が形成された歴史についてお話します。最後に、ブナ科の中でも特にコナラ属が食糧・燃料・建材として農耕成立前の人類社会を支えたことも紹介したいと思います。

    2. どんぐりの不思議な戦略 /佐竹暁子(九州大学)

    ブナ科植物の多様化にともなって、次世代である種子(どんぐり)をなるべく多く残す戦略が発達してきました。中でも、どんぐりの多い成り年とほとんど作られない不成り年を繰り返す戦略や、開花から1年もの長い間受精を長引かせる戦略に着目し、これらの繁殖戦略がどんぐりへの栄養投資の仕方や送粉者をめぐる競争に依存して進化したことを紹介することで、どんぐりが持つ繁殖戦略の謎が解き明かされていく面白さを参加者のみなさんと共有したいと思います。

    3. どんぐりと昆虫の切っても切れない関係 /平山大輔(三重大学)

    日本産どんぐりを食害する昆虫相はかなり明らかになってきていますが、それらの昆虫にどんぐりがどう対抗して生きているのかについては不明な点が多く残されています。どんぐりの進化を考える上で、そのような昆虫との相互作用の知見を欠くことはできません。どんぐりを食害する昆虫の一種に、どんぐりへの産卵後に枝ごと切り落とすという極めてユニークな行動を示す昆虫、ハイイロチョッキリがいます。最近の研究で、ハイイロチョッキリの枝切り行動とどんぐりの繁殖特性には明瞭な対応関係があることが分かってきました。ハイイロチョッキリはどのようにどんぐりを利用し、一方、どんぐりはそれに対してどう適応しているのか、野外調査から見えてきた両者の関係について紹介します。