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企画集会 T06
近年、生物個体の出生・死亡・移動といった過程をアルゴリズムとして記述する、いわゆる個体ベースモデルを用いたシミュレーション研究が生態学の様々な分野で普及しつつある。「個体」を単位とするシミュレーション研究は、生態学者が取り扱う生物個体の生き様のアルゴリズム的記述を通じ、対象系をボトムアップ的に構成して系の振る舞いを調べる手法である。ある意味、解析的記述による数理モデル研究の対極にあるといえる。
出生・死亡・移動は各個体が局所的に経験する過程である。これらの局所的な過程の総体として、集団・群集・生態系といった高次レベルの現象を我々は観察する。個体レベルの局所的な過程が如何にして高次集団レベルの現象として具現化するかはこれまでに数多くの研究者が取り組んできた問題であり、様々なアプローチによる研究が続いている。個体ベースモデルを用いたボトムアップ的シミュレーション研究はその1つである。
しかし、個体ベースモデルを用いたモデル研究の多くは、プログラミング実装上の困難さやプログラム実行効率を優先して、総個体数が一定に保たれる、個体の位置が格子上に制約される、といった生物学的に不自然な単純化を設定している。こうした不自然な単純化を設定せず、もっと自由気ままに「個体」を出生・死亡・移動させることが出来る個体ベースモデルは実現できないものだろうか?
本集会では、1)個体ベースモデルの一つとしての格子モデルの研究例、2)格子モデルの実装方法、さらに、3)不自然な制約の無い普遍的な個体ベースモデルを構築する枠組みについて話題を提供する。今後のシミュレーション研究のあり方について参加者を交えて議論・討論を行いたい。本集会は、生態学における個体ベースモデラーの裾野を広げることを目的としている。自分が取り組む対象系をアルゴリズム的に検証してみたい方の参加を期待する。
[T06-1] 格子モデル 生かすも殺すも モデル次第
[T06-2] 格子モデルはこうしなさい - How to 格子モデル -
[T06-3] こうでありたい個体ベースモデルの実装