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企画集会 T16
従来、外来生物は創始者効果や遺伝的浮動の影響を受けて、侵入先で遺伝的多様性が低下し、その結果、新たな環境への適応能が制限されると考えられてきた。しかしながら、実際には、遺伝的多様性が低下しても定着に成功する外来生物は存在するし、繰り返し侵入することで遺伝的多様性が増加する例もある。外来種(集団)と在来種(集団)とのあいだに、“雑種”が形成されることもある。分子遺伝マーカーに基づく外来生物の分子生態学的研究は、近年、海外で急速に増えてきたが、国内では交雑などの遺伝的攪乱の研究例はあるものの、外来生物そのものを対象とした研究は稀である。本集会では、水域の外来生物(藻類、魚類、甲殻類)を対象として、海外から国内、そして国内から海外に渡った侵入者たちが、どこから、どのように侵入し、また、侵入先でどのように分布拡大してきたか、分子遺伝マーカーを用いて遺伝子(遺伝子浸透)もしくは個体群レベルで明らかにした研究を紹介する。次に、外来生物は定着先で遺伝的多様性がどのように変化しているのか、遺伝的変異と定着成功の間には関係性があるのか、そして、侵入先で遺伝的多様性が減少している分類群は定着成功に際してどのような生物学的特性を持つのかを考察し、外来生物の定着成功の鍵となる遺伝的・生態的特性について議論を上下したい。
コメンテーター:岩崎敬二(奈良大),西田睦(東大)
[T16-1] タイリクバラタナゴとニッポンバラタナゴの関係に見る外来種の遺伝子浸透
[T16-2] ミトコンドリアDNA解析に基づく外来ザリガニ類の遺伝的変異と分散様式
[T16-3] AFLP法に基づく日本に定着したニジマスとテラピアの集団構造分析
[T16-4] 遺伝子マーカーを用いた褐藻ワカメ,緑藻アオサ類移入集団の起源と動態の解析
[T16-5] 中立遺伝マーカーと量的遺伝解析から外来魚ブルーギルの定着成功を探る