| 要旨トップ | ESJ59 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


シンポジウム S01 -- 3月18日 14:00-17:00 A会場

湖国における「田んぼ研究」の現在・過去・未来

企画者: 金尾 滋史(琵琶湖博物館), 大塚 泰介(琵琶湖博物館)

水田は、国内においてきわめて広大な面積を有し、人の関与を受けて形成されてきた代表的な環境のひとつである。加えてモンスーンアジアを特徴づける氾濫原や湿地の代償として生態学的にも重要な場所であることはこの学会でも多く議論されてきた。

滋賀県では、琵琶湖博物館をはじめとする研究機関がこの人とかかわりの深い水田(水田地帯)に強い関心をもち続け、単に生態学の研究のみならず、環境社会学や農業土木分野の視点も含めつつ研究を実施してきた。特に生物分野では、一時的水域である水田や小水路などを生息場、繁殖場として利用している魚類、そしてそれらをとりまく生物群集に焦点をあて、生態に関する基礎的、先駆的な研究が行なわれてきた。また、研究が進むと共にさまざまな生物分類群を扱うことのできる自然科学系分野の研究者、ならびに人文・社会科学系分野の研究者が集結し、学際的研究を発展させていった点に特色がある。このようにして得られた研究成果は、最近の滋賀県の行政施策(魚のゆりかご水田プロジェクトなど)の基礎にもなっている。さらに、近年では、農家や地域住民をはじめとした自主的な田んぼの生きもの調査や田んぼの生きもの観察会などが研究者やNPOと連動して実施され、これらの生物保全へのアプローチが高まりつつある。

そこで、本シンポジウムでは、滋賀県でかつてから実践されてきた水田生態系研究、とくに人との関わりにも焦点をあてた研究史を紐解き、そこから生まれた成果、そして新たな目指すべき視点について発信する。さらに、農家や地域住民が水田の生物多様性の価値を認識し、水田を利用しつつ保全する機運を研究者と共に高めていくための今後の展開・あり方について議論していきたい。

[S01-1] 湖国における「田んぼ研究」の始まりとそのアウトカム 嘉田 由紀子(滋賀県知事)

[S01-2] 環境倫理学から見た滋賀県水田地帯の環境保全政策の位置づけ―「誰が」生態系サービスを享受するのか? 冨田 涼都(静岡大・農)

[S01-3] 水田利用魚類を媒介として田んぼと湖の関係を探る 前畑 政善(神戸学院大・人文)

[S01-4] 琵琶湖集水域・内陸部の水田地帯における水生動物の多様性の現状 向井 康夫(東北大院・生命科学)

[S01-5] 湖国の水田地帯における生物多様性研究の現在・過去・未来 金尾 滋史(琵琶湖博物館)


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